2014年02月15日(土) |
(1)春の印象 (2)彷徨い(さまよい) (3)五月 (4)昼寝 |
(1)春の印象
喧騒な日は 沈み 静寂な白い月は 登った
過去のかなしみもくるしみも 忘れたような顔をして 菜の花畑の上に 月が淡く光っていた
初春の夜の風は 孤高のうたを囁きながら 平野をしずかに流れていった
(2)彷徨い(さまよい)
春はない 清純な花の香りも 憂愁に満ちた草の匂いも 春はない
空白の時 北風にあおられて 小雪に頬を赤く染めて 彼は人跡のない原野を行く
思い出は足跡のように雪に消され 幸福をたどる道標はない
(3)五月
五月は始め
鯉のぼりは 春の風に パタパタとはためき
花はいっせいに 開き咲きて
その彩りに 足を止めて しばし見入り
蜜に集(つど)い 酔いしれし 小さな虫たちを 今発見す
(4)昼寝
毛布の暖かさにつつまれて しかし 温めてくれるのは 恋人でなく 人間でなく 神ではなく 幸福のようなもので
安らかさに包まれて あたたかく やわらかく 安心で 疑いもなく
ほんのりと女性の匂いがして 春の日の匂いがして すべてを あなたに任せよう
ああ 花の香りがしている 草木(くさき)のせつない香りがする
さあ 眠りなさいと 春は やさしく ささやく
私の意識は しだいに 遠のく しずかで おだやかで しだいに しだいに 遠のく
春は 終わろうと している
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