VITA HOMOSEXUALIS
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2015年05月11日(月) 丘の向こうの夕陽

 私は幼稚園で不登校になった。

 幼稚園だから不登校というのは変かも知れない。とにかく、通うことが出来なくなったのだ。いじめっ子がいるからだった。クレヨンで絵を描くとき、私が赤やピンクを使うと「おんな色」、「おんな色」と言ってからかった。私を納屋の中に閉じこめて外から鍵をかけ、「おまえは今日からここで木を食べて暮らすのだ」と言った。私はその納屋を破壊して外に出た。そして私は怒られた。いじめっ子は園長の息子だったからだ。

 ともかくこういうことがあって私は幼稚園に行かなくなり、祖母が私を祖母の住む町へ連れて行った。そこは郊外の住宅造成地で、祖母は叔母と同居しており、長屋のような市営住宅の一室だった。私は遊び相手もおらず、ひな壇になった造成地をダンプトラックやユンボが動くのを眺めていた。市営住宅もひな壇にあり、枯れ草の生えている斜面に排水溝が掘られてあった。私は丸い石をその排水溝に転がして遊んだ。下の段まで届いたら成功、途中で草にひっかかって止まったら失敗なのであった。私は夕暮れになって祖母が夕飯に私を呼びに来るまでそうやって何度もカラカラ、カラカラと石を転がして遊んだ。造成地の向こうには低い丘が連なっており、傾いた夕陽がその丘の向こうに落ちた。

 そうやって遊んでいるあるとき、私の手はどうしたはずみか自分の性器に触れた。私が何を思ったのか覚えていないが、私は性器をいじった。いじっているうちに得も言われぬ快感が下半身を襲った。私はオーガスムに達したのだった。

 今では幼児がオナニーをするのは珍しくないことを私は知っている。だが当時は、自分の体に起こった変化が何なのかわからず、そしてそれは誰にも明かしてはいけないことなのだと思った。もちろん射精はしない。勃起もしない。だが、快感だけは、成長して後に感じる性の快感と同じだった。

 私は毎日石を転がしながらオナニーをするようになった。当然ながらそんな名前も知らない。この世の中でこんな珍しいことを発見したのは自分だけなのだと思い、私はますます孤独を深めた。


aqua |MAIL

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