舌の色はピンク
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やぁ、俺は花粉狂の男だ。名前は捨てた。花粉を吸い込んだら死ぬと診断された幼少のみぎりにね。だってそうだろう? 花粉、即、死の男なんて他にいないのだから、個体差を識別するための名前なんて不要さ。何より名字を背負う人生が辛くてね。一族郎党が花粉狂差別に遭う不幸を避けたかったのだね、まったく英断だよ。うん、よくできた人間だろう? まっとうな大人だろう? でも花粉吸い込んだら死ぬんだぜ俺。 かといってね、嘆くばかりの日々でもない。ノーマルな花粉症の輩を見ると優越感があるのさ。なぜなら俺は花粉を吸い込んだ経験ゼロ。発症経験ゼロ。まぁ当たり前の話です。くしゃみしているノーマルが可哀想過ぎて泣けてくるよ。ブラウン管越しにね。そこが核シェルター生まれ核シェルター育ち核シェルター住まいの難点かな。一度くらいは生でノーマル拝んでみたかったもんだ。 さて、医者から「なんだかんだいって死ぬ前に狂うだろ」とかいう理不尽な根拠で名付けられたこの病を患って以来、どうにかこうにか健常に生き続けてもう15年が経つ。ここらで俺は動こうと思う。生身の体で、日照り風薫る世界を堪能しようと思う。ナニ、花粉で死にはしない。というか地上は俺以外死滅してる。花粉ふぜいに殺されるよりは、みんなと同じ放射能で死ぬってのがさ、人間だろう? まっとうな大人だろう? どんなに日が重くたって、風が腐ってたって、いいんだ。俺は花粉に負けなかった。心から満足して向かうよ。比べればすこしは美しい世界へ。
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花粉を絶つには核で地球が滅亡するしかない、というお話。
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