舌の色はピンク
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駅でコンタクトレンズを落としてしまったらしい 成人男性とそうぐうした。 僕が通りがかった時点ではすでに紛失から ある程度時間が経過してるらしく 当事者含め6人の通行人が協力して懸命にレンズを探していた。 僕も時間に余裕があったため レンズ探しに加わろうとしゃがみこんだのだけど あろうことか目線を床に下げたその瞬間に発見してしまった。
まずい、と思った。
いわば新参者に過ぎない自分が 古参のレンズ探し協力者を出し抜いて 彼らの苦労を一瞬で覆してしまう、 そんな真似は僕にはできないと思った。
あれこれ思案めぐらせ無言で数十秒間の小芝居を演じたのち 頃合を見計らって僕はレンズに手を伸ばし 「あ、これじゃないですかね」 と言った、 が、その 「あ、これじゃな」くらい、 「な」くらいのところで隣にいた古参協力者が 「おぉこれだこれだ!」とかぶせてきた。 大きい声と大げさな動作をもってしてだ。
はたして手柄は彼のものとなり 謝辞と尊敬のまなざしを一身に浴びて照れくさそうだった。 僕はすごすごその場を去るほかなかった。 いや、全然いいんだけど、 むしろ当初気遣っていた古参の面目は保たせてやれたんだけど、 どこか胸の奥にこう、こう……うん。 こう、その……うん。 うん。
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