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2008年01月16日(水) 一生忘れない 昨日は満床だった救急部。 今日は一つベッドが空きました。 午後の救急の講義が終わり、 カンファレンスのために救急部に戻ると、 一人搬送されていました。 いきなりこれかいと思いましたが、 100歳近いと思われるおばあちゃん。 気道におかゆが詰まって心肺停止となって運ばれてきたそうです。 …が、先生たちに漂う諦めモード。 そして、ご家族を呼んで病態の説明→死亡確認へ。 ご家族も覚悟されていたのか涙一つ見せずに先生から説明を受けていました。 先生は、 「まああの年なら仕方ないことなのかもね。 大往生でご家族もこれならばと思っているみたいだよ。」 と言っていましたが、確かにそうですね。 病院ではなく、自宅で家族と一緒にご飯を食べながらのタイミングで。 という意味ではよかったのかもしれません。 心臓マッサージを見たのは初めてじゃありません。 今回はもう望みがなかったのでマッサージも緩めでしたが、 初めて見たのは本気マッサージでした。 地元の病院で実習していたときのことですが、 ちょうど消化器外科を見学中で、重症の急性膵炎の手術に入っていました。 先生曰く、 「こんなにひどいのは一生に1回見れたらいい方だよ。」 というほどの患者さんだったらしく、 他の外科の先生、内科の先生方も仕事の合間を縫ってやって来ては、手術を見守っていました。 わたしはちょうど外科の見学日だったので 幸運にも手洗いをして、一番いいポジションから手術を見ていました。 確かに先生が言うように「ひどい」状態で、 膵臓はどろどろに消化されて原形を留めていませんでした。 とにかく溶けた膵臓をすくってお腹の外に出す作業。 そのうち麻酔科の先生がそわそわしだす。 こんな言葉、大学病院での実習では一度も聞いた事がありません。 それほどすごい手術だったのだと思います。 きっと、そんな手術は先生もしたくなかっただろうな。 それしかもう選択肢がなかったのだろうけど。 よっぽど状態が悪かったのか、 お腹は開いたままで少し厚めのビニールのようなものでふたをして、 端をパチンパチンとホッチキスのようなもので止めるだけの応急処置で、 患者さんはそのままICUへ。 そして一気に状態は悪化して、 すぐに心臓マッサージが始まりました。 本気の心臓マッサージって疲れるんだと見て分かるくらいの壮絶なものでした。 大の大人の男が患者さんに馬乗りになって、 体重をかけての本気のマッサージ。 が、疲れるのかすぐに交代してマッサージは続きました。 心拍が戻ったところでマッサージを中断してご家族に説明。 わたしは実習中だったのでそこまでしか見ることができませんでしたが、 そのあとすぐに患者さんは亡くなったそうです。 去年の春休みのことでした。 まだ大学病院での実習が始まる前で、 わたしにとってはデビュー戦だったのですが、 初っ端からあれを見ることになるとは思いませんでした。 ですが、それがとても印象深くて(当たり前か…) 4月からの実習はいいテンションで入れたのを覚えています。 きっとあの光景は、実習に慣れた今見たとしても、 研修医になってからだとしても、 忘れられない光景だと思います。 将来は、何度かああいう場面に実際に立ち会うことになるんだろうな。 自分がそこにいて何かできるのかどうか、ちょっと心配です。 というか、全く想像できません。 明日もし搬送があれば、 患者さんが助かるところを見たいです。 |