☆空想代理日記☆
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昨日はものすごい強風だった。女性が歩いていたら、うっかり鼻のしたが咽仏あたりまでのびてしまいそうな色っぽい風だった。
前回の春一番からかぞえて、今回のは春二十三番くらいだと思う。眼があけられないというか、目蓋があげられないくらいの風に、対抗策として後ろ向きで歩くことにしたのだった。
それにしても、何が飛んでいてもおかしくなかった。実際、いろんな物が飛んでいたのだろうとも考えられる。
たぶん、傘が飛ばされて驚いたおばあさんの入れ歯などは確実に飛んでいたと思う。または、窓が割れないように必死におさえていたおじさんの洋服がすべて飛ばされてしまって、全裸で家のなかを覗いている人に思われていたかもしれないのだ。
そんな状況が、前を向くだけで視られると思うといてもたってもいられなかった。
不逞者、意を決して前を向く。瞬間、視界に入ってきたのは、『木村君』に小さな傘を装着させて大笑いしている少年たちだった。
不逞者、怒る。 少年たち、逃げる。 不逞者、追いかける。 不逞者、息がきれる。 不逞者、飛んできた入れ歯におでこを噛まれた。
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