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2009年02月20日(金)
カカシとテン子のバレンタインデイ 2)


ここからが、本来の仕事だ。

依頼主とターゲットの水面下での確執は、実は身近な人間には知られている。
だから、万が一にも依頼主が疑われるような状況で任務を遂行殺するわけにはいかないのだ。
そしてターゲットが、最近、原因不明の眩暈に悩まされていたことも事実だ。アルコールとの関係はわからないが、己の養子が社長の席に付いためでたいお披露目の席、多少、飲みすぎて倒れても「ああ、また」と思われる。
同時に、そういう席だからこそ、あまり事を荒立てたくない、という心理も働く。
その隙を、ボクらは突く。
とまあ、こういったダンドリだった。

依頼主の意向とは少々異なるが、最終的につじつまが合えばよし。

いくら極悪非道の輩であっても、ひと一人を葬るのになんのためらいも痛痒も覚えない、というわけでは実はない。
それに今回は、依頼主にとっては憎悪すべき相手だったろうが、それなり彼を尊敬し慕っている部下もいるのだ。
だから、できれば周囲の嘆きは少ないほうがいい。
明らかに殺されたとわかる方法ではなく、病死に見える方法を選んだ。
具体的な策は……まあ、そこまで詳細を明かす必要もないだろう。

屋敷に運び込まれたターゲットは二階の寝室に寝かされた。
執事らしい老齢の男が側についていたが、医師の到着の報に部屋を離れた。
ボクらは窓から侵入し、無事、事を成し、すぐに退去する。
木分身のボクが、庭木と一体化して様子を伺っていると、かかりつけの医者が部屋に入ってきた。
ターゲットに声をかけ、そこはさすが医者だ、すぐに異変に気づく。
脈をとり、瞳孔を確かめ、そして腕時計を見た、らしい。
「残念ながら」
一瞬の沈黙の後、ざわつきが大きくなる。
そんな、急に、といった声がそこここであがっているようだ。
うめくような「ご主人さま」という声は、先ほどの執事のものだろう。
「このところ血圧が、かなりあがっておいででしたから」
医師の言葉に、ボクらは顔を見合わせ頷いた。
とりあえず、会場にもどり分身と入れ替わり、依頼主に報告をしなくてはならない。
ボクらは来た道を、ホテルへと戻った。

当然のことながら、依頼主はおおぜいの招待客と挨拶を交わし、談笑し、合間に部下からの報告に頷き、と忙しくしていた。
部下と思われる男に、「失礼ながら、予定があるので中途退席する」旨を伝言した。
「ご依頼の件について、前向きに検討させていただきます、と必ずお伝えください」
これが任務完了の合言葉だった。
下っ端らしい部下は、生真面目な様子で「かしこまりました」と答え、しばしカカシさんに見蕩れ、それからボクを見て赤面し、礼をした。

「さて、と。仕事も終わったし、デートしようね~」

実はボクら、というかカカシさんは、このホテルに部屋を取っていた。
ご丁寧に、予約名はカーク・フェルド、ちなみにファミリー・ネームのほうは畑を意味する異国語だそうだ。
パーティで名乗ったフィールドも、同様に畑を意味する別の異国語らしい。
よくそんなことを知っているものだと関心する。
そして、なぜか同宿者の性別が女性になっていて、ボクはげんなりしたのだ。
「だって、テン子になってもらわなくちゃならないんだから」
とカカシさんは言ったが、部屋の出入りをいちいちチェックされているわけではないのだから、何も女性でなくても、と思った。思ったが、言えなかった。
これは任務上、必要なことだから。そしてツーマンセルとはいえ、指揮権はカカシさんにある。

そして、ボクらは部屋――ベッドルームとリビングルームが分かれていて、トイレもベッドルーム側とリビングルーム側に2つあるような、はっきり言って、カカシさんやボクが寝起きする木の葉の里の住まいよりもはるかに広いスイートルームに、戻った。

とりあえず、カカシさんはご機嫌だ。おそらくボクは、テンゾウにはもどれない……ため息が出そうだ。
「この服は着替えたいんですが」
おそるおそる訴えると、あっさりと「そうだね~。窮屈だもんね、こういう服」とカカシさんが答える。
ほっとして、まずは動きにくいことこのうえなし、の高いヒールの靴を脱いだ。
はぁ、やれやれだ。そして、首の後ろの止め具を外そうと格闘している目の前に、ピランと……。
「はい、コレ」
ふわふわしたシフォン地のワンピースだ。青みがかったグリーンで、裾にプリーツが入っている。
「また、買ったんですか」
「上品なデザインでしょ?」
ボクの質問をはぐらかし、カカシさんが胸元のリボンを指先でなぞる。
「これがポイントなんだよね」
ボクは、とうとうため息をついた。チラとカカシさんが上目遣いにボクを見る。
手を伸ばすと「へ?」と目を丸くした。
「着替えますから」
「どうしちゃったの? テン」
「どうもしてません、カカシさんと言い合っても無駄なだけと学びましたから」

不本意ではあるが、カカシさんが喜んでくれるならかまわない。
気のめいる任務の後の、お遊びにだって、喜んで付き合います、はい。

「そしたらね、これ」
差し出されたのは、ブーツ。ただし、靴底はペッタンとしていて、歩き安そうだ。
「このほうが楽だと思うんだ」

で、ボクはふわふわしたワンピースに、毛足の長い動物の皮を使ったらしいショートブーツ姿だ。膝の辺りはスースーするが足元が暖かいので、寒くはなかった。
もしかして、気を遣ってくれたのかな、なんて思う。
もっとも「かっわいい」なんて笑う先輩の審美眼は、絶対におかしいと断言したい。
だが、今日のボクはひと味違っていた。
さっきまで着ていたスーツを、もっさりした忍服のアンダーにきがえようとした先輩を阻止するのに成功したのだ。
「ね? 先輩、可愛い女性につりあうのは、ステキな男性ですよね? それが、もっさい任服姿じゃ、女性の相手には俺がふさわしい、なんて勘違いやろうがハイエナのように寄ってきますよ」
そのひとことで、先輩は脱ぎかけたスーツに再び袖を通した。

そしてボクらは、ホテルのティールームに赴いた。
中途半端な時間だったから、レストランはランチタイムとディナータイムの狭間で閉まっていたのだ。
今日のお勧めというティータイムセットを頼むと、ポットいっぱいの紅茶に、スコーンや一口で食べられるように切り分けられたサンドイッチが付いてきた。
そして、小皿にはサイコロみたいな、しかしサイコロよりはよほど大きい、茶色い塊が4つほど。
「チョコレート?」
ボクの言葉に先輩が「バレンタインデイだ」と呟いた。
そういえば、やたらとカップルが目に付くと思ったのだ。
甘いもの嫌いのカカシさんは、チョコレートを好まない。だから、両方が里にいるときのこの日は飲みに行く、というのが定番だったのだが。今回の任務でドタバタしていて、うっかりしていた。
「そう言えば、付き合い始めたのって、今ぐらいの時期だったんだよね」
ゆったりと沈む身体を受け止めてくれるすわり心地のいいソファに埋もれるようにして、カカシさんが視線を飛ばした。
「そうでしたね」
目を伏せると視界に自分の膝小僧が見えたので、ボクはあわてて視線を上げた。
暮れていく窓の外、ホテルの中庭にイルミネーションが灯る。綺麗だ。
そこそこ長い付き合いだから、いろいろなことがあった。きっと、これからもいろいろなことがあるのだろうな、とボクはぼんやり思う。

「これからも、よろしくね」
カカシさんが笑った。ほれぼれするほど男前な笑顔だ。
「こちらこそ」
大好きですよ、先輩。ずっと変わらずに。

この平和なひとときのあとに待ち受けていた騒動を、だれが予感できただろうか。
何も知らず、ボクらは視線を絡ませ、微笑みあったのだった。