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 お婿にいった四+カカのお話
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  イタチ里抜けのとき

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  初めての遠距離恋愛なテンカカ
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   香る珈琲、そして恋 -キリリク話-
 四代目とカカシの絆を知って、
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 【2部】 ぶらっく・るしあん-4話
 【3部】 ぶれいぶ・ぶる7話
 【Epilogue】 そして、恋

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  春霞-4話
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4話
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  波の国と中忍試験の間

  月読-5話 -キリリク話-
 月読の術に倒れたカカシを心配しつつ、
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  月読 後日談


  テキーラサンライズ-19話
 ぎむれっと前日譚


   ぎむれっと-40話 -キリリク話
  かっこいいカカシと、
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 ※途中、18禁あり
  プロローグ  本編  エピローグ



  La recommandation
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-ヤマカカな話-

  再会-Reunion-  第二部





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2007年04月04日(水)
あんしゃんて 9 -完結-


「広範囲にわたって結界が張られている」
面を上げ、右目を閉じた先輩の赤い左目が見つめる先、森のなかにぽっかりと開けた場所があった。
大きな木はなく、下生えの草がところどころで伸び放題になっており、その向こうに、壊れかけた社のようなものがある。ということは、昔は何かを奉っていたのかもしれない。
「結界を解くのは簡単なんだけど。封印に術式が描かれている」
「つまり、結界を解くと同時に、その術が発動する?」
先輩は頷いて、面を下ろした。
「結界を迂回して、向こうを探ってみましょうか?」
「本陣は間違いなく、あの結界のなかにある。あの術式は、中の者を守ると同時に、外から攻撃する者に対して鏡のような役割を果たすんだ」
「鏡?」
「そ。たとえばオレが攻撃すると、それがそのまま跳ね返ってくるわけ」
「ええと……つまり、結界を解除すると当時に、鏡のバリアが張られる、という感じでしょうか?」
「うん、そう。うまい言い方するね、テンゾウ」
「最初から鏡にしないわけは?」
「外に出てる者が戻れないじゃない」
「あ、なるほど」
「内側から解除すれば、鏡にはならないんだ」

さて、と先輩は腕組みする。
「封印を先に無効化することはできないんですか?」
「結界を解くのと同時に、術式の書かれた封印を破壊しないと無理」
「破壊?」
「破くでも、燃やすでも……ただ、剥がしたんじゃダメ」
ボクだったら、もしかしたら……。
「封印は、何箇所ですか?」
「東西南北に4枚、のはず」
「だったら」
ボクの言葉に、先輩が振り向く。
「影分身はだめ。同時にやらなくちゃならないんだけど、この辺りの磁場が狂っていて電波が乱れるから無線が使えない」
「ボクの分身だったら、大丈夫です、無線なしで本体と意志の疎通が図れます。4体とも分身を使えば、同時決行も可能です」
「でも、4体も分身を出すの……チャクラ喰うよ?」
「大丈夫です、それぐらいだったら」
「でもそのあと、間違いなく戦闘に突入よ?」
「大丈夫です」
そう、大丈夫。
ボクは言い聞かせる。
チャクラの潜在量は決して少なくない。
先輩はじっとボクを見た。
「わかった。虎面と鳥面を待つよりも、そのほうが確実そうだね」

トクン、トクンと心臓がうるさい。
初めて戦場で先輩を見かけたときのようだ。
でも、この心臓の高鳴りは、あのときとは少し違う。
どこがどう違うのか、説明は難しい。
でも、違う。

「先輩、ボクはけっこう頼りになる後輩だと思いますよ」
分身を繰り出しながら言う。
「うん。頼りになるな、と思ったから、あの日、テンゾウを貰い受けに行ったんだもの」
「え?」
びっくりしたので、三体目の分身が中途半端に固まった。
「援護しにいった戦場に、おまえがいた。隊長のあいつが慎重派なのは知ってるから、おまえが敵陣の只中に飛び込んでいった格好の配置なのは、おまえの意志だとすぐわかった」
先輩は、あの荒地での任務の話を始めた。
「あいつはね~、昔、大事な部下を亡くしてるんだ。だから、どうしても慎重になる。それがプラスに働くときもあれば、慎重になりすぎる余り機を逃して、結果、窮地に陥ることもある、そういうヤツだって知ってるから、オレはけっこう焦って援護についたんだ」
最初に見たのは、ボクに襲い掛かる水流に対峙して、水遁を発動させた先輩の姿だ。
「行ってみれば、シビレを切らした部下は飛び出してる、敵さんは攻撃してくる。あちゃ~、どうするよ、みたいな感じだったのよ、オレ」
決して、焦っているようには見えなかったのだが、焦っていたのだろうか?
「すみません」
思わず謝りつつ、分身が中途だったのを思い出し、術を続ける。
「でもね、おまえ、落ち着いていたよね、敵の水遁に対して」
まずい、とは思ったが、対処はできると思ったのだ。
「戦場で、何が困るってパニックになるヤツなの。怪我するヤツより困る。でも、おまえはそうじゃなかった。だから、オレは安心して援護できた」
こんな緊迫した事態なのに、カカシ先輩は穏やかな声で語る。
「オレが援護さえすれば、おまえには何か策があったみたいだったから、後はなんとかしてくれるだろうって、思ったんだ。だって、オレ、現場についた直後で状況も読めてなかったしね」

あのとき、あの一瞬で、そう判断して、ボクを敵の水流から守ってくれたのか。
ボクを信じて。

「実際、おまえはあのとき、ちゃんと敵をひとりやっつけた。攻撃から防御にまわった次の瞬間、オレが敵の攻撃を防いだとわかってすぐ、また攻撃に転じた、あの判断力」
先輩の手が伸びて、ボクの肩にそっとふれた。
「惚れ惚れしたよ。あの攻守の切り替え。ベテランだって、みんながみんな、そううまいわけじゃないから」
でも、最後のひとりをしとめたのは。
「だからさ、オレもちょっと頑張ったの。後々、オレの隊に勧誘したいって下心のある身としちゃ、先輩らしいとこ、見せたいじゃない」
そう言って笑う先輩は、悪戯っ子のようだった。
「だから。今回も、お前を信じる。お前の策をオレは信じるよ」

ボクは先輩の信頼に応えたい。応えられる自分でありたい。
四体目の分身を繰り出し、ボクは頷いた。
「任せてください」

その後、先輩が結界を解くのと同時に、ボクの分身たちが術を封じ、そのまま突入した敵の頭との戦闘は、意外とあっさりカタがついた。
そして、気がつくと、木遁を繰り出すときの違和感もなくなっていた。
「え? だって分身出すときに、もう、それなかったよ」
カカシ先輩に言われて、初めてボクは気づいた。
確かに……あのときは、失敗の許されない事態に緊張して……いや、でも、それはいつも同じのはずで……。
「だから、ああ、克服したんだって、思ってたんだけど。違ったの?」
違ったの?って……すみません、違っていたんですが。
でも、そんなふうに気に掛けてくださっていたんですね。
「まあ、あのままでも、テンゾウはチャクラ量も少なくないから多少、無駄になってもそう問題はないとは思ったんだけどさ」
それから、らしくもなくもじもじと言いよどんでから先輩は続けた。
「でもさ、印を組む瞬間、ちょっとだけ嫌そうなのが、すごく気になったんだ。自覚はしていないみたいだし、もしかして、本心では嫌いなのに必要だから木遁使っていたり……とか……」
言葉に上らない、カカシ先輩の気持ちがわかるような気がした。
せっかくもらった能力だから、使わないとね、とは、よく言われた言葉だ。
自分が欲しいと思ったのならともかく、意志とは無関係に、しかも後付で与えられた能力など、捨ててしまってもいい、いやいっそ、欲しいというならあなたにあげる、と言いそうになったことが何度もある。
もっているから、使わないと。
確かにそうなのかもしれない。
だが、望んで得た能力でもなければ、身に備わっていたものでもない。
いらないと、そう言うことも出来た。言わなかったのは己の意志だが、でも、恩も義理もあった。
その辺の葛藤は、ずっとついてまわった。

「いえ。少しだけ昔の記憶に引っ張られて、違和感を覚えていただけです。嫌いなんてことはありません。貴重な初代さまの能力ですし」
そんな葛藤も、もうこれ限り。カカシ先輩が、ボクの術を気に入ってくれているみたいだから。
「なら、いいけど」
「ええ。先輩がチャクラ切れを起こして倒れても、搬送できますし」
ボクの言葉に、先輩は憮然として「おまえ、かわいくない」と言った。
ええ、可愛くなくてけっこうです。
ボクは、先輩を守れる後輩になりたいんですから。

こうやってボクは先輩と出会ったのだった。
それは同時に、ボクがボクに与えられた能力と、ほんとうの意味で和解したことを意味していた。


<了>

Enchant’e
フランス語で「はじめまして」の意味をもつ。大槻健二のオリジナルで、ジン、ライチリキュール、レモンジュースと少量の砂糖をシェイクして作られるカクテルはさっぱりした味わい。