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 お婿にいった四+カカのお話
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2007年04月02日(月)
あんしゃんて 7


だが、いくら待っても、嘔吐も全身の激痛もやってはこなかった。
もちろん、出血もしない。

ボクはもう一度、慎重に術を発動する。
一瞬――やはり、一瞬だけ違和を覚える。
そのときチャクラが乱れ、無駄に消滅する。

すばやく印を組むと、違和は自覚しない程度で済んでいる。
が、もうボクには感じることができた。
やはり、チャクラが乱れる、一瞬だけだが。そして消滅する量は、感じた違和に比べてずっと多い。
つまり、ボクは常にこの消滅する分を見越して、多めにチャクラを練っていたのだ。
慣れない場所だったり、何らかの理由で精神状態が不安定になると、消滅する量はもっと増える。

これか……。

先輩は、わかっていたのだろう。
だから、この訓練をボクに課した。
言葉で説明するのではなく、自分で感じろ、という意味で。

ボクは4日目の夕方、病院への道をたどっていた。
何度やっても、どう心を鎮めても、違和感は消えない。
先輩に会って、確かめたかった。
しかし、カカシ先輩は今朝退院した、と病院の受付で告げられた。
先輩が退院したということは、遠からず、任務の命も下るということだ。
こんな中途半端なまま、任務について大丈夫なのだろうか。
いままでこれでやってきたのだから、大丈夫だとは思うが、やはり不安はあった。

でも、先輩がこの結果を見越していたのだとしたら、こういうボクのこともきっと織り込み済みなのだろう。
そう考えてから、ボクは首を傾げた。いや、意外となにも考えてないかもしれない。
割と、こういうことは本人次第、という醒めた部分を持ち合わせているひとだ。
気づいていないようだから、気づくための手伝いはするけれど、あとは自分でなんとかしなさいよ、と。
一人前の忍なんでしょ?
先輩の声が聞こえてきそうで、ボクは頭を抱えた。
「どうしたらいいんですか、ボク」

「あ、おまえ」
「よう、何してんだ?」
顔を上げると、連れ立っているヒガタとイナダがいた。
「カカシさん、退院したって?」
「ああ、ええ。退院しました」
「じゃさ、下っ端同士でお祝いに飲みに行こう」
よくわからない理屈で、ボクはふたりに連行されるような格好で、居酒屋ののれんをくぐった。
ついた席で、まず名前を聞かれた。差し支えなければ、と。
「え? カカシ先輩、ボクの名前教えてなかったんですか?」
「言わないよ。本人の許可なしには。オレたちの名前は、伝えといて、って頼んだから」
ああ、そういうことか、とボクは納得した。
「それより、いいよタメ口で」
「たぶん、タメぐらいだから」
ボクは苦笑しながら、名を告げる。
そのとき、ビールとお通しの独活のキンピラが卓に置かれ、ボクらは乾杯した。
「テンゾウか……なんか、渋いのな」
これも、本名ではない。研究所から助けられたときに、便宜上、与えられた名前だ。
もっとも、気に入ってはいる。カカシ先輩が、「かっこいいよね」と言ったから。
「よその小国に、昔、いたんだって、そういう名前の忍が。その国では小説に登場したりするんだって」
「テンゾウが、ですか?」と聞いたボクに先輩は、首をかしげて考えていた。
「ハンゾウとか、サイゾウとか……そんな名前だったかな? それにちなんだんじゃない? あのころ、三代目、ちょうどその小国の歴史を調べたりしていたから」
意外とあのひと、ミーハーなところあるからね、と笑ったカカシ先輩を思い出す。

そういえば、と、うるいのマヨネーズ和えに箸を伸ばしながら、ヒガタが口を開いた。
「一時、噂になっていたの、テンゾウのことだったのかな?」
「ああ、アレ。そうか、おまえのことか?」
意味がわからず、問い返すと、ヒガタが、「えっと」と言いよどむ。それをイナダが
「隊長の怒り買って隊から放り出されたのを、カカシさんが拾ったって」
とストレートに答えてくれた。バカ、おまえ直接的すぎ、とたしなめるヒガタも、気にせずそのまま告げてくれるイナダも、いいやつだとボクは思った。
「おそらく、ボクのことだ。そうか、噂になっていたんだ」
「そりゃそうだよ。拾ったのが、あのカカシさんだもの」
そこでボクは、カカシ先輩と出会った任務のことを、簡単に説明した。
もちろん詳細は、いくら暗部仲間といえどしゃべるわけにはいかないが、カカシさんが水遁でボクを助け、そのあと、敵を仕留めたのぐらいは話しても差し支えない。
「え? おまえ、じゃあ、雷切見たの?」
フキやかぼちゃの天ぷらの盛り合わせも、次々と目の前から消えていく。
呆然と見つめていて、一瞬反応が遅れた。

「雷切? そう言うんだ」
「本来は、千鳥って術名なんだけどね。雷を切ったって噂があって」
千鳥も雷切も、噂だけは知っていた。
「あれが、そうだったのか……」
「どうだった?」
興味津々に聞いてくるイナダに、ボクは見たままを答えた。
地を走る稲妻のようだった、あの鮮烈な光景は目に焼きついている。
「あれをさ、12,3ぐらいのときに自力で身に付けたんだって」
「凄いよなぁ」
その後、カカシ先輩のことを根掘り葉掘り聞かれるかと思っていたのだが、そんなことはなかった。
「へい、お待ち」の声で、大皿に山盛りの串焼きがドンと置かれるのと同時に、話題はあっさり変わった。
目下、イナダが片想いしている相手の話になり、それから、ヒガタがよく秋道の一族と間違えられる話で笑った。

「ところで、さっき、なにうずくまってたの?」
揚げ出し豆腐をつつくヒガタに聞かれて、ボクはあっさりと事情を話してしまった。
ヒガタの食べっぷりに毒気を抜かれたのもあるが、このふたりに対して、カカシ先輩とはもちろん違うが、でも、似たような心安さを感じたからだったのだろう。
術名などは出さなかったが、ただ、自分が術を発動するとき、ちょっとした違和感を覚えるということを。
「う~ん、なんだろう? 今までそういうことはなくて、急にってことじゃないんだよね?」
「今までは、感じていなかっただけで、チャクラは乱れていたんだと思う」
「あれかな?」
とヒガタが、残った串焼きにかぶりつきながら言った。
「前に、体調悪いときに、レバ刺し食ったんだよ。まずいかな、って思ったんだけどね。そしたら案の定、気持ち悪くなって。それ以来、しばらくレバ刺し見ただけで、吐き気がした」
「体調悪いときにレバ刺し食うなよ、ナマモノ、厳禁だろうが、ってか、全然、違うだろそれ?」
「いや、だから、体調悪くなくても、前にそういうことがあると身体が覚えているというか、気持ちが覚えているのかな? とにかく、体調は悪くないのに、反射的に気持ち悪くなっちゃうんだよ」
「だから、全然、違うって。だって食い物の話じゃないだろうが」
「え? だって、なんかそれに近い感じじゃない? 話聞いてると」
「どこがだよ」
「だから、違和感、っていうのが」
言い合うふたりの会話を聞いて、ボクは思わず「ああ、似てる」と言っていた。
「だろ? たぶん、前にその術使ったときに、なんかあったんだよ」

何かあったから、ではない。
ボクは本能的に、自分のなかの他人の遺伝子に拒絶反応を起こしていたのだ。
免疫的な意味での拒絶反応はおさまっていたが、ボクは覚えていた。
あの拒絶反応がもたらした死の恐怖、痛み、苦しみ、それらを忘れてはいなかった。
だから、術を発動するとき、少しだけ気持ちが拒絶する。

「それ、どうやって直した?」
鶏の竜田揚げを口に運びながら、ヒガタが「何を?」と聞く。
「吐き気。それとも、まだレバ刺し食べられない?」
「いや、もう食べられる。直したというか、そのうち、体が忘れたのかな」
そう言って、しばらくヒガタは黙った。でも、口はもぐもぐと動き、竜田揚げに添えられていた芋に箸が伸びる。
これだけ健啖家なのだ。きっとそのレバ刺し事件は彼にとって、忘れがたい大事件だったのだろう。
一緒にされるのは、ちょっとアレだが……。
「ああ、そうか。うん、もともとレバ刺しは好きなんだよ。で、しばらく食べられなくて、でもある日、猛然と食べたくなったんだね。また吐くかな、と思ったんだけど、それならそれでもいいやって思って食べたら、大丈夫だった」
なんだよ、おまえそれ、とイナダが卓を叩いて笑う。
「笑うけど、おまえ、ハナマスちゃんに会うたびに吐き気するって考えてもみろよ、笑えないから」
ハマナスちゃんというのが、イナダの思いびとだ。
「ハマナスちゃんと、レバ刺しを一緒にするな~~~~」
「うるさい、オレにとってのレバ刺しは、おまえにとってのハマナスちゃんなんだ~~~~」
ボクは、ちょっとだけイナダに同情した。