Life is Bubble.

2006年12月08日(金) ゴメンネ。

母さんが発狂したと、弟から電話が有り、速攻で出かけた。


元々早上がり出来そうになかったので、当日欠勤するつもりだったがね。


母はぁたし以外の人間、誰にも自分の病気の事を言っていないので、弟は酷くうろたえていた。


実家のチャイムを押すと、弟が玄関を開けてくれた。


「まぁちゃん、早く!」


とぁたしの手を引っ張り、靴も脱ぐ間もなくリビングへ連れていかれた。
ぁたしより小さく、いつも泣いてばかりいた弟が、今ではぁたしよりもデカくなって、ぁたしの腕を引っ張っている。


リビングには、小さく丸まって泣きじゃくっている母が居た。
ぁたしを見つけると


「まぁちゃん」


と小さく呟き、手を伸ばし、抱っこを求めた。
其れに応じて抱き締めると、また吐き気がした。
母に抱き締められると、幼い頃から吐き気がする。
まだ『其れ』はぁたしの中に有るらしい。


「ごめんね、ごめんね。」


と泣きながら謝る母の頭を撫でながら、


「もう怖くないよ。」


と壊れない様に優しく抱き締めた。


突然自分の心臓に疾患が見つかったら誰でも怖いだろう。
(ぁたしは産まれた時からなので、今さら怖くもないが。)


母は目を丸くしてぁたしを見た後、顔をくしゃくしゃにして、幼い子供の様に、泣いた。
嗚咽を漏らして、しゃくりあげながら泣いた。


泣き出しそうな自分を殺して、涙は堪えた。
微笑んで、全てを許した。


「怖かったね。
 もう大丈夫だよ。
 何処にも行かないから。
 いっぱい泣いてもいいんだよ。」


ぁたしの言葉に、「うん、うん。」と言いながら頷き、泣いていた。
弟は自分の部屋に戻っていた。


母も虐待を受け育った。
だからぁたしも、虐待を受け、育った。


もしも、ぁたしの子供が産まれる前に、母が死んでしまったら、生まれ変わってぁたしの子供に成ればいい。
そしたらぁたしは母さんを産んであげる。
傷つかない様に、大事に大事に、守ってあげるよ。
ぁたしの元に、産まれて下さい。


心からそう思った。
世界で一番愛してあげたい。


何時間かして、母が正気に戻り、


「仕事大丈夫?」


と訊かれ、「大丈夫だよ。」と言った。


帰り際に


「(何も出来なくて)御免ね。」


と言うと、


「ううん、有り難う。」


と申し訳無さそうに、恥じらいながら笑っていた。



家に帰り、朝迄ピアノを弾いた。


途中何度も椅子から崩れ落ち、「母さんを助けて下さい。」と泣いた。


涙で、鍵盤の黒と白がにじんで、灰色に成っても弾いた。


 < Past  INDEX  Future >


花房 雅美。

My追加