週末にはどこからか花火の音が響いてきて 雷か花火なのか耳をすます。 温度の高い夏には音の聞こえが速いはずだけれど 遠くで揚がっている花火とわたしの間にはたくさんの「何か」の存在を感じる。 たくさんの「何か」の気配を遠雷のような花火の音は一緒に運んでくる。 それは祭りの人々の気配だし 夜にうごめく虫や生き物の息づかいだし もちろん見えない何かも混じっているんだと思う。 音はそんなものたちの「濃い」気配に少し歪んで聞こえてくる。 歪んで聞こえるのはわたしの耳だからかもしれない。 朝には豊穣と感じるその音のゆがみ加減が 夜にはちょっと狂いそうな気がしてくる。 蛾の狂ったような飛び方の聖火 みっしりと重い湿度の聖火 狂いそうだなと思うんだ。 夜空に花火の咲く一瞬 夜空を花火が裂く一瞬 アセチレンの光の後ろ側 その時だけ その場所にだけ そこにある気配 いつも「何か」をスキャンせずにはいられないわたしの耳が 気配を察知しようとするわたしの皮膚が 何かをとらえようとフル回転すればするほど 頭は萎えてどろんと眠気がやって来るのです。 どろんとね…
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