日々の泡

2008年07月10日(木) 行き過ぎた人


ひとり、杖で歩くわたしに声をかけた人がいた。
こっから階段だ
19段上がったら
しばらくはてえらだ
それからっと…わからねえな…
何段かわからねえけど また階段だ
そうだ…そっからまた段が始まってる--
 その人は少し酒の匂いがしたけれど
最後にわたしの腕を握って
気をつけて行きなよ、お姉さん…
と深い慈愛の声で言った。
深い慈愛の声で言った。
翳るときと
照るとき
同じくだれにもあるのなら
あの人の限られた照るときに
どうか あの人の心に雲がないように
めいっぱい 照る時を享受できますように。
いつか遠い時代に
行き過ぎた人
今日、黄昏にまた縁を結んだ。


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茉莉夏 [MAIL]