駅 ひとり、杖で歩くわたしに声をかけた人がいた。 こっから階段だ 19段上がったら しばらくはてえらだ それからっと…わからねえな… 何段かわからねえけど また階段だ そうだ…そっからまた段が始まってる-- その人は少し酒の匂いがしたけれど 最後にわたしの腕を握って 気をつけて行きなよ、お姉さん… と深い慈愛の声で言った。 深い慈愛の声で言った。 翳るときと 照るとき 同じくだれにもあるのなら あの人の限られた照るときに どうか あの人の心に雲がないように めいっぱい 照る時を享受できますように。 いつか遠い時代に 行き過ぎた人 今日、黄昏にまた縁を結んだ。
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