はぐれ雲日記
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2000年12月12日(火) 山里の寺

同僚のYさんが亡くなった。病棟がいっしょになった時、第一印象はとっつきにくく頑固おやじの
イメージがあって、正直言ってやりにくかった。
でも、ほぼ一年経つ頃にはそんなイメージがすっかり払拭。 さっぱりした気性で言うべき時には
はっきりと意見を言う人で皆に慕われるようになり、私も仲良しになれてうれしかった。
ところが8月に体調を崩して入院。職場では人一倍働き、 家では80過ぎのお母さんの介護をしておられた。
9月のある日、「ちょっと入院するから」と言って私の夜勤の時に自宅の庭で採れたという大きな栗を
病棟のみんなで分けてと、どっさり持って来てくれた。
わたしは「じゃあ、しっかり治して又元気な顔を見せてくださいね」と手を振った。
その時、「ああ」と言ってちょっと寂しそうに笑ったその姿が最後になろうとは・・・。

今夜、お通夜だった。奥多摩の山里にある古いお寺で、境内に入りきれずほとんどの人が外で読経を聞いた。
650年前からあるという杉の大木。暗闇の仁王像。玉砂利。磨きぬいたような夜空に凍てつく星。
中空に浮かんだ大きな大きな月。 ほんに今夜は満月か。それにしても山は冷える。

帰宅して頂いた”志”を開けてみると、うす味梅干2パック、海苔、お茶のつめ合わせ。もうひとつの箱には
清酒と砂糖が入っていた。  最後まで気配りの人である。不謹慎だが今間でのお返しの中ででこんな「うれしい」香典返しはなかったですよ。最高。
「だけど早過ぎだよー。おやじさん。」  しんしんと寂しい。  はかなくて・・・眠れない。



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