はぐれ雲日記
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2000年12月06日(水) ゲンセンカン主人

つげ義春さんの漫画が好きだ。 初めてつげさんの漫画に出会ったのは小学生のころ。
流感で熱をだし、トロトロ眠って、起きて、倦怠感と浮遊感が一体になって身の置き所もないほど
すっかり弱った体で、外のご不浄で用をたして、またトロトロと眠りにおちて・・・。
こんな繰りかえしの中でうすがみをはぐように少しづつ回復していったある日のこと
クラスメートが何冊かの単行本を持ってお見舞いに来てくれた。
「明日とりに来るよ。」としっかり言い残して帰ったのは、これらの本は”貸し本屋さん”の貸し本だから。
りぼんの騎士、バラのイヤリング、月刊”少女”などに混じってあの、”ネジ式”があった。
他の漫画の内容は、不思議と忘れたが”ネジ式”はまだらまだらだが、漫画のひとこまひとこまを
覚えている。乗っても乗ってももとのところはもどってしまう汽車。
少年と年配の女医さん。採血の注射器。血が流れないようネジ式。 ちょっと倒錯した大人の世界。
いままで読んでいた少女漫画とはまるでちがう世界。
小春日の汽車の中、夢の中で垣間見たような不思議なストーリー。
病みあがりの心身にインパクトが強かったのか、ふたたび高熱をだしてしまった。
「だめだぁ、字イは体に毒だ!」と本は家の誰かに取り上げられてしまった。

自分で稼ぐようになってからはゲンセンカン主人、赤い花、無能の人、丹沢鉱泉旅行記・・・
一生懸命読ませていただいた。 今でもこの時期になると読みたくなる。
つるべ落としに陽が暮れて、木枯らしが吹いて、肩をすぼめながらとぼとぼと家路に着く。
夏に比べ、少しトーンダウンした体調に、こたつとつげ義春本はすごく波長があってるもんね。
「おーい、ここにあったおみかんとせんべいはどこーーー?」



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