歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2009年01月07日(水) 歯医者が恐れる患者とは?

「ということで、○○さんという患者の歯の治療、宜しく頼むわ。」
発言の主は愚弟です。愚弟はうちの近所の某病院で内科医として働いています。内科と言ってもいろいろな専門がありますが、愚弟の専門は循環器。心筋梗塞や狭心症、不整脈などの心臓の病気を専門に治療しているのです。
現在、心臓の病気はガンについて第二位の死亡原因疾患です。厚生労働省も2010年までの健康目標として健康日本21という目標を立てているのですが、その中に10の重点項目の一つに心臓の病気があるくらい、心臓の病気に対する対策は国の急務となっているといっていいでしょう。しかも、昨今の医師不足。世間では、救急医や小児科医、産科医、麻酔科医の不足が取沙汰されていますが、循環器内科医も大変な不足です。うちの近くの病院を見渡してもここ数年で循環器科の閉鎖が相次いでいます。そのため、愚弟が勤務している病院では心臓の病気の患者さんが集中し、非常に忙しい日々を過ごしているようです。

愚弟は、時折僕に患者さんを紹介してくれます。冒頭の発言もそんな愚弟からのものだったのですが、患者さんを紹介してくれるということは歯医者にとって非常に有難いと思います。何せ、医師不足ではありますが、歯医者は過剰です。多くの歯科医院では年々患者の減少に悩まされ、経営を圧迫する結果となっているのです。うちのそんな零細歯医者の一軒なのです。それ故、愚弟からの患者さんの紹介は有難いのですが、紹介されてくる患者さんは皆、心臓の病気を持っているという事実。

愚弟からの紹介状を読むと、必ず心筋梗塞や狭心症、不整脈といった心臓の病気の羅列があります。やはり健康な患者さんに比べ、心臓の病を持っている患者さんの治療はそれなりに緊張します。もし何か起こったらどのように対処すればいいか?ということを常に考えておかないといけないからです。
その反面、僕は安心するところがあります。その訳は、これら患者さんは、愚弟がしっかりと管理してくれているからです。愚弟は僕に紹介してくれる患者さんは、基本的に症状や病状が落ち着いている、歯の治療に耐えられると判断した患者さんのみを紹介してくれるからです。常に備えはしておかなければなりませんが、愚弟が心臓の病気をしっかりと管理してくれている患者さんは、ある意味、不安なく歯の治療をすることができます。非常にわかりやすい患者さんでもあるのです。

最近、一定の年齢以上の患者さんであれば、何か薬を常用していることが多くなってきました。糖尿病、高脂血症、高血圧症といった生活習慣病でかかりつけ医にかかっている人は多くなってきています。その一方で、これら生活習慣病に全く無自覚、無関心であったり、知っていても医者にかからない人もいます。どちらが歯医者にとって怖いかと、もちろん後者です。
歯医者は治療を行う前には必ず問診をしますが、何らかの医者にかかっている人は歯医者としても安心です。目の前の患者さんがどんな病気があり、どんな治療を受けているか、必要な医療情報を持っているからです。医療情報を持っていれば、ある程度の心構え、備えができます。ところが、患者さんが何らかの病気があるのに医者にかかっていないような場合、歯の治療中に突然、何らかの症状を起こす可能性があるのです。突然、気分が悪くなったり、けいれんが起こったり、胸が痛くなったりなんてことがあるのです。

歯の治療中に歯以外の病気による症状が起こっても、専門医の治療を受けさせるまでは、患者さんの体の管理は歯医者が行わないといけません。事前に何も聞いていなかった患者さんが突然何かの歯以外の症状を訴えることほど、歯医者にとって怖いものはないのです。


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