2008年04月17日(木) |
保険証を持参しない患者への対応 |
皆さん既にご存知のことと思いますが、日本は国民皆保険制度の国です。原則として誰もが何らかの健康保険組合に加入しているはずです。保険診療の場合、体のどこかが悪くなって医療機関を受診する際には、必ず受付で自らの保険証を提示し、健康保険組合の組合員であることを証明しなければなりません。そうすることによって医療費を全額負担することなく、患者は医療費の一部を支払うだけで済むのです。
ところが、患者さんの中には保険証を持ってこなかった、持参することを忘れて来院するようなケースがあります。このような患者さんの場合、医療機関ではどうするでしょう? 基本的には、医療にかかる医療費は全額自費で支払うことになります。保険証を持っている場合、ほとんどの方は医療費の3割を自らが支払い、残りの7割が所属する健康保険組合から支払われる。これが保険診療であるわけですが、保険組合の組合員であることを示す保険証の提示が無い場合、保険組合に所属しているかどうかを調べる術がありません。そのため、保険証の持参のない場合、医療費は全額自己負担しなければならないのです。
ところが、実際のところはケースバイケースで対応しているのが現状です。例えば、交通事故などに遭い、救急車で救急病院に運ばれるようなケース。この場合、救急病院に搬送された人が保険証を持っていない場合の方が多いことでしょう。むしろ、絶えず保険証を携帯している人の方が少数派かもしれません。こういった場合、医療機関では、保険資格の確認をせずに保険診療が行われることが認められているのです。
また、何度も何年も通い続けている患者さんの場合はどうでしょう?公立病院の場合は、上記の原則を貫くことになります。保険証の提示が無い限り、全てが医療費の全てを自らが負担しないといけません。 これが個人開業医の場合ではどうでしょう?公立病院と同様、個人開業医でも対応は同じではあるのですが、長年通い続けている患者さん、顔なじみの患者さん、お隣ご近所の患者さんなどは心情的に診療費の全額を負担してもらうことを伝えにくいものです。本来はいけないことではありますが、長年の付き合いのある患者さんや近所の患者さんの場合は、後日保険証を提示することをお願いし、確実に提示することを約束して保険診療の自己負担分のみを支払ってもらうようなケースがあるのではないかと思います。
これは開業医にとってリスクのあることではあります。いつまで経っても保険証の提示がなかったり、患者さん自身がどこかへ雲隠れしてしまい来院しなくなった場合などは、結果的に開業医の持ち出しとなるからです。 筋を通すべきか、心情を優先すべきか?開業医では、保険証を持参しない患者さんに対する医療費の請求は対応に苦慮することもあるものなのです。
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