2008年03月10日(月) |
閉経女性は歯科治療に注意を! |
先日、ある先輩の歯医者の先生から視力の衰えについて長時間を話をされました。あまりにも長い話だったのでかなり閉口したのですが、話の内容は僕自身、普段から感じていることで、なるほどと思うことでした。
自分は若い頃から視力がよく、眼鏡やコンタクトレンズを装着したことが一度もないことが自慢であった。ところが、40歳代後半から徐々に目の焦点が合わなくなるなるようなことが現れ始め、気がついた時には老眼鏡が手放すことができなくなったとのこと。誰しも年を重ねると、自分は関係ないと思っていた体の変化が必ず起こる。この現実を受け入れるには時間がかかったという話だったのです。
誰しも年齢を重ねれば避けられない体の変化があるものですが、女性の場合、年を重ねて必ず起こる体の変化の一つに閉経があります。単に生理が起こらなくなるというのであれば問題はないようですが、悲しいことに生理の終わりは体にいろいろな変化をもたらすもののようです。 その一つが骨密度が徐々に小さくなる骨粗鬆症。男女とも年を重ねれば骨密度は下がっていくものですが、女性の場合の方が骨密度が下がり体に悪影響が出る場合が多いとされています。ある調査では男性100万人に対し女性は800万人いるのだとか。骨粗鬆症は圧倒的に女性に多い病気の一つであることが言えるでしょう。 どうして女性の方が多いのかということですが、これは女性の方がもともと骨が細いうえに、閉経によって骨をつくるもとになる女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減ることがあげられるようです。
現在、日本には骨粗鬆症になっている患者は1000万人いるとされています。この骨粗鬆症の患者さんのうち内服薬を服用している人が100万人いるのだとか。
ところで、薬には特定の病気に対する薬理作用以外に体に悪影響を及ぼす効果があります。副作用と呼ばれるもので、どんなに慎重に時間をかけて実験や研究を重ねた薬であっても使用している患者さんによっては害になる副作用というものは避けられません。 実は、この骨粗鬆症の内服薬にも副作用があるのですが、その副作用の一つに顎の骨が腐る副作用があり、最近、歯科口腔外科関連の研究者、臨床家から報告が相次いでいます。厄介なことに、この顎の骨が腐る副作用はどうして起こるのか、メカニズムが解明されていません。しかも、一度この副作用が起こるとなかなか治りにくいために、一般の歯医者は言うに及ばず口腔外科の専門家でも対処するか苦慮しているのが現状です。 実際にどれくらいの割合で起こっているかは諸説あるようですが、骨粗鬆症の内服薬を服用している患者さんのうちの0.05〜0.1%程度ぐらいだということが言われています。ほとんどの骨粗鬆症の内服薬を飲んでいる人に顎の骨が腐る副作用は出ないともいえるのですが、最近になってこの副作用が抜歯をすることにより0.37%〜0.8%程度に発症頻度が上昇することが報告されているのです。
現在、歯科医師会や医師会、骨粗鬆症の薬を製造している製薬会社では、骨粗鬆症の薬を服用する人に関して、歯科治療を受ける際には必ず歯科医院で申し出るように文章やパンフレット等で注意を喚起しています。 歯科医院でも受付や歯科医院内で骨粗鬆症の薬を服用していることを自己申告するようにして欲しいとお願いする掲示やポスターを張り出していますし、歯医者自身も問診時にこのことを確認するように努めているはずです。 この副作用、まだまだわからないことが多く根本解決に必要な情報はまだまだ研究中です。そのため、骨粗鬆症の薬を服用している人には不必要な抜歯は行わない、抜歯を行わざるをえない場合は、骨粗鬆症の薬を処方している担当医と緊密に連絡を取り、薬を一時的に飲むことを中止する休薬を行った上で、抜歯をすることが求められています。
皆さんの周囲の閉経女性で、骨粗鬆症の内服薬を飲んでいる人がいれば、その人には必ず歯科医院を受診する際には、自分が飲んでいる薬を申告するように伝えて欲しいと思いますし、自分が服用しているなら、是非ともそのことを歯科医院で申し出て欲しいと思います。
ちなみに、問題になっている骨粗鬆症の内服薬は、ビスホスホネート系薬剤と呼ばれるもので、薬品名は以下のものです。
ダイドロネル(大日本住友製薬製) フォサマック(万有製薬) ボナロン(帝人ファーマ) アクトネル(味の素、販売:エーザイ) ベネット(武田薬品工業)
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