先週、地元歯科医師会に所属する歯医者Y先生の歯科医院に空き巣が入りました。聞いたところによると、朝早くY先生が自身の歯科医院の裏口から入ろうとしたところ、裏口の扉の鍵が開いていたとのこと。不審に思ったY先生が中に入ったところ、診療室が荒らされ、見るも無残な状態だったそうです。その後、現場検証に来た警察の担当者の話によれば、金目の物を見つけることができなかった腹いせに診療室内を荒らしたのではないかということだったそうなのです。
この話を地元歯科医師会の数人の先生と話をしていると、空き巣にやられたことがある先生、歯科医院がかなり多いことがわかりました。どうも半数以上の歯科医院が何らかの形で空き巣被害を受けたことがあるというのです。中には二度、三度と空き巣の被害を受けた歯科医院もあるのだとか。 この空き巣の犯人ですが、かなり手口が手馴れている輩のようで、警察の捜査にも関わらず逮捕に至るケースは少ないのだそうです。たとえ、犯人が捕まったとしても盗んだ現金や物は見つからないようです。ある先生の場合は、歯科医院においてあったパソコンを盗まれたそうですが、逮捕された犯人の家からそのパソコンが押収されたのだとか。ところが、パソコンは既に分解され全く使えない状態だったそうで、元の持ち主である先生の手元には粗大ゴミ化したパソコンの残骸が戻ってきたとのこと。 ある先生は、敢えて受付の目に付きやすいところに数万円の現金を置いているのだとか。如何にも取って下さいとばかりのように思えますが、金を見つけられなかった犯人が腹いせに診療所に火をつけたり、診療器具や機材を壊したり傷つけたりしないようにすることがないようにするための予防策だというのです。同じ空き巣の被害に遭うなら、金を見つけられなかった腹いせに診療器具は機材を壊されたり、放火されたりする被害を考えると、数万円の現金を盗まれる方が損害が少ないからだというのです。
地元歯科医師会の歯医者仲間とどのようにすれば空き巣に入られないようになるか?という話をしていたのですが、多少金はかかっても防犯会社と契約し、監視するようにして自衛しないとだめではないかという結論に落ち着きました。このようなことを書くと、歯科医院はセキュリティが甘かったのか?と思われそうですが、実際のところはそのとおりで、防犯のプロに防犯を任せるという意識が少ない歯医者が多いのが現状です。
空き巣話をしていたところ、同席していた先輩のF先生が言いました。
「わしのところはまだ一回も空き巣に入られたことがないよ」 「防犯対策をしっかりとされているのじゃないですか?」 「そのように思うかもしれないけど、実際は全く逆なんだな。ついこの間までうちの診療所は夜間や休みの日も施錠しなかったんだよ。うちの近くの歯科医院で次々と盗難があって今度はうちの番かと思っていたんだけど、どうも泥棒とは縁がないようなんだな。」 「それは幸運だったんじゃないですか。どうして先生の診療書には泥棒が入らなかったのでしょう?」 「うちの歯科医院はオンボロだからね。まさかこんなボロ家で歯医者をやっているとは思わないのじゃないかな?家内は言うんだよ、『うちの歯科医院はあまりにも古いから泥棒は気持ち悪がっているんじゃないの。世の中では盗人は怖いとされているけど、お化け屋敷のようなうちの診療所の中にいるあんたを怖がっているんじゃない?』」 F先生、大柄で非常に強面。そんなF先生が突然、古い家から突然現れたら誰でも身を引いてしまうのはわかるような気がしました。歯科医院の防犯対策は歯医者の顔で決まるのか?そのようなことを思いながらも強面のF先生の前では口が裂けても言えなかった、歯医者そうさんでした。
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