誰しも自分以外の人とストレス無く付き合いたいと願うものですが、実際のところはそうとは限らないのが世の常です。生理的なレベルから育った環境の違い、価値観の違い、性格の相違、意見の対立、利害の対立等々、自分が好むと好まざると肌が合う人、合わない人は誰しもいるものです。 歯医者の世界においてもそれは例外ではありません。どうしても受け入れられない、好きになれない、距離をおきたいと思いたくなる歯医者はいるものです。
以前、地元歯科医師会で記念行事を催そうとした時のことです。その会は某ホテルの大広間で行われたのですが、事前にテーブルごとに人数を割り振り、参加する人の席順を決めていたのです。 歯科医師会という組織は年功序列がはっきりとしている組織です。記念行事を催す際には、当然のことながら上座から先輩の先生に座ってもらうような席順にしていたのです。その際、あるベテランの先生がこんなことを言ったのです。
「薬に禁忌というものがあるように、先生同士にも禁忌の組み合わせがあるから注意するようにと。」 禁忌とは薬を服用する際によく使用される言葉ですが、他の薬や食べ物と取り合わせることを避けるという意味で用いられます。そこからタブーという意味で用いられることが多いものですが、あるベテランの先生は、歯医者同士でもタブーとなる組み合わせがあるから気を配るようにというアドバイスだったのです。 そこで、仲の悪い先生同士は隣同士しない、同じテーブルに配置しないという配慮がなされました。僕自身、ベテランの先生のアドバイスを聞いていて、思いも寄らぬ先生同士が犬猿の仲であることを知ることになったのですが、地元でしかも同じ歯医者同士という狭い社会の中でも相性の悪さというものが存在するのだということを実感しました。 この手の歯医者の仲違いの原因は、開業時のいざこざ、ある会議での意見対立、つるしあげ、感情的なしこりなどから修復できない状態となり、持続しているようなのです。
開業している歯医者は、基本的には開業歯科医院の院長である場合が多いもの。一国一城の主、お山の大将みたいなところがあるのです。そうした人たちの集合体が歯科医師会という組織でもあります。多くの歯科医師会に所属する開業歯科医院の院長はお互いに気を遣っているものですが、中には自分の個性を前面に出したがる人もいます。一国一城の主が多い開業歯科医院の院長という立場を考えると、自分の主張を前面に押し出す人もいるのです。お互いが何らかの妥協があればいいのですが、一歩も引かないような、引けない性格の人たちが仲違いを引き起こすようです。その結果、顔を合わしたくもない、挨拶も交わさないような場合もあるのです。
歯医者というと聖人君主のように思われる方もいるかもしれませんが、実際のところはそうではない。一般の方と同様、相性が悪く、お互いに対立し続けている歯医者もいるものなのです。
|