2007年06月28日(木) |
フードファイトには反対します! |
昨日、何気なくネットサーフィンをしているとこのような記事が目に留まりました。
アメリカ独立記念日である7月4日にニューヨークで開かれる、恒例のホットドッグ早食い競争を前に、6連覇中の小林尊さんが顎関節症に苦しんでいることを告白し、米メディアが相次いで報道されたというのです。 小林さんは数々のホットドッグ早食い競争で優勝し、圧倒的な強さから「TSUNAMI」と呼ばれているそうで、テレビのバラエティー番組に出演するなど米国で最も有名な日本人の1人なのだとか。 小林さんは自身のブログで顎関節症であることを告白。現在、指1本分ぐらいしか顎が開かない状態なのだそうで、「フードファイターにとっての顎関節症は、野球で言えば投手がひじの故障をしたようなもの」と現在の心情を書いているのだとか。 小林さんは信頼できる医師の下で顎関節症の治療をしながら、今回の大会にも出場する意向であるということなのですが・・・。
食事は、人間にとって無くてはならない、生きていくうえで必要不可欠な行為の一つです。毎日、食事を取ることにより人間は活動していく上でのエネルギーを得ていることは誰もが否定しようのない事実です。 食事による効能は単に栄養摂取だけではありません。食事を取ることは、人間に安らぎの場ともなります。どんなに興奮している人でも食事中は落ち着くものですが、これは、食事の場面では、神経生理学的に交感神経の働きが抑えられ、副交感神経の働きが活発になるためですが、おかげでどんな人でも落ち着いて興奮せずに食事を取ることが可能なわけです。よく“めしでも食いながら話をしよう”と言って、相談事に乗るようなことがあるものですが、これは神経生理学的には非常に理にかなったことで、食事をすることにより落ち着いて話ができることが経験的に知っている人が多いからできることなのです。 また、一人だけでなく周囲に気の合う仲間や家族と食事をすることは、家族や仲間同士の親睦を深めることができるもの。昨今、家庭内の団欒が少なくなったことが言われていますが、その理由の一つは家族同士が集まり、食事を食べながら何気ない会話を楽しむこと機会が失われているためではないかと思われます。
食事というのは単に食べるという行為以上に意味を持つことは明白です。
一方、世界では飢饉や社会体制の影響からか食べることもままならに人々が数多く存在します。満足に食事をすることができないまま、一生を終えてしまう。そんな悲惨で惨めな生活を過ごさざるをえない人々のことを考えると、毎日の食事を取ることができる環境を非常に有難く感じなければならないのではないかと強く思います。飽食の時代と言われていますが、飽食の裏には満足に食事も取れない人の世界がある。そのことをもっと考えなければならないと思うのです。 2年前、日本では食育基本法が制定され、徐々に周知されつつありますが、このような食育基本法なる法律を制定しないといけないくらい、今の日本の食文化は乱れているということになります。もっと食べることの意義を一人一人真剣に考え、当たり前だと思っている食事が実は大変有難いものであることを認識する必要があります。
このようなことを考えると、僕はどうしてもフードファイトなるものが理解できないのです。フードファイトをする人のことをフードファイターと呼ぶのだそうですが、前述の小林さんは、
“フードファイターは食べることのアスリートという尊厳を持たなければならない”という持論を持っているのだとか。
僕はこの考えに異議を唱えたいと思います。
そもそも、フードファイターなるものはアスリートなのでしょうか? アスリートと呼ばれる人は自分の肉体を鍛え上げることにより競技に臨む人たちのことを言うのだとは思いますが、フードファイトなるもの、一体何を鍛えるのでしょうか?食べ物を少しでも早く胃の中に詰め込むことがフードファイトなら、それは競技ではありません。 人間の体は、鍛えられる部分と鍛えられない部分があります。鍛えられる部分の代表格は筋肉でしょう。様々なトレーニング法が考案され、筋肉を競技により順応しやすいよう鍛え上げることが可能です。ところが、胃を含めた消化管はどうでしょう?大人になるまでは成長するでしょうが、成長期が終われば、これら消化管はそのまま。むしろ、年齢を重ねるに連れて消化管の機能は徐々に衰えていくものです。鍛えようとしても鍛えることができないのが消化管なのです。 鍛えられない消化管の代表である胃に短時間で多くの食物を詰め込むというフードファイトは果たして競技に当たるのでしょうか?フードファイトを行うフードファイターはアスリートと呼べるのでしょうか? こんなことを書くとフードファイターの人やフードファイト愛好者に怒られてしまうかもしれませんが、フードファイトというのは早食い競争ではないですか。早食い競争に“フードファイト”という横文字を当てることは、意図的に何らかの競技のようにイメージさせるように思えてならないのです。
今回、小林さんは顎関節症にかかり、治療を受けているのだそうです。僕は顎関節症になった小林さんのことは同情します。少しでも早く適切な治療を受けて体調を整えて欲しいとは思うのですが、その反面、どうして顎関節症にかかったかということを考えると、僕は素直に同情できないところがあります。実際の症状を確認したわけではありませんが、早食いするために大きく口を開けすぎた代償が顎関節にきているのではないかとも思えるのです。 小林さんは、ニューヨークで7月4日に開催予定のホットドッグ早食い競争には必ず出場するお気持ちのようですが、僕は長年フードファイトを行ったことにより小林さんの体が悲鳴をあげているように思えてなりません。某テレビ番組ではありませんが、体が最終警告を発しているようにさえ感じるのです。
小林さんは7月4日にニューヨークで開かれる、ホットドッグ早食い競争に出場する意向だそうですが、歯医者として、僕は出場を控えて欲しいと願います。そして、フードファイトなるものからすっかりと足を洗って欲しいと願っています。限られた時間に少しでも多くの量の食べ物を胃の中に詰め込むことは、スポーツでも何でもありません。単なる早食いに過ぎない。人間の生理に全く反した行為です。
今回の報道では、毎日新聞をはじめいくつかの大手のマスコミも取り上げていましたが、マスコミもマスコミです。フードファイトを好意的に取り上げているマスコミに僕は違和感を覚えずにはいられません。同じ取り上げるなら、もっと批判するべきではないでしょうか。
食事をする際、日本では“頂きます”ということを言ってから食べるものです。食べることができる幸せ、多くの生命の犠牲によって人間が美味しく食事をすることができることを感謝する意味で、食事前に“頂きます”と手を合わせるのではないでしょうか。食事とは楽しいものでありますが、実は神聖なものでもあると思うのです。
そんな食事を軽視するかのようなフードファイトは如何なものでしょうか。フードファイトは食事を冒涜する行為のように思えてなりません。 僕はフードファイトには反対します。
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