歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年06月09日(土) 泣いてもらいます

6月4日から6月10日までは歯の衛生週間ということで、全国各地で歯や口の健康に関する啓発事業と称して様々な催し物、PR行事が行われています。僕も普段の診療の合間をぬって地元歯科医師会の関連の歯の衛生週間がらみの行事に参加してきました。
他の地元歯科医師会の先生とも話をしていたのですが、年々、歯の衛生週間がらみの行事には参加者が増えてきています。中でも、幼い子供を連れた親子が参加されるケースが多くなってきています。このこと自体は好ましい傾向だと言えます。三つ子の魂百までといいますが、幼い頃に歯や口の中のことに関心を持つということは、一生歯は口の中に対する関心が持続するきっかけともなります。既に大きな大人になってから生活習慣を変えようとしてもなかなか難しいものです。頭の柔らかい、柔軟性のある子供の時期に好ましい習慣を身につけさせると、その習慣は一生続く可能性が高いと思います。そういった意味で、親が幼い子供を連れて歯の衛生週間記念行事に参加して頂くことは、将来の歯や口の中の健康に大きなプラスに働くことは間違いないことでしょう。

さて、昨日は歯の衛生週間後半。偶然重なったというべきかもしれませんが、僕は1歳6ヶ月児歯科検診に検診医として出務してきました。
1歳6ヶ月児健康診断というのは、母子保健法に定められている母子保健事業の一つですが、全国の1歳6ヶ月の子供を対象に各市町村が責任をもって行う事業です。この1歳6ヶ月児健康診断の中に歯科検診があります。
1歳6ヶ月児の口の中というのは一つの目安があります。乳歯は全部で20本生えるものなのですが、1歳6ヶ月の時には一番奥に生える第二乳臼歯以外の16本の歯が生え揃う時期でもあるのです。口の中の衛生状態を調べると同時に、歯の生え具合をチェックすることが歯科検診の大きな目的でもあるわけです。
ちなみに、3歳児健康診断というものもありますが、この時行われる歯科検診では乳歯が全部生え揃っている時期でもありますから、乳歯の生え揃っている様子をチェックすることも検診項目の一つとなっているのです。

1歳6ヶ月児の歯科検診はいつもながら非常に賑やかなものとなりました。1歳6ヶ月児は、まだ他人との言葉によるコミュニケーションが取りにくい年齢でもあります。自分から口から言葉を発して意思伝達をすることもままならない年齢。そんな1歳6ヶ月児の口の中を全く見ず知らずの検診医が診ようとするわけです。
「お口を開けてみてね」と言っても逆に口を真一文字にしてしまう子供もいるくらいです。説得して口の中を開けてもらうことができませんし、多くの1歳6ヶ月児を限られた時間で検診しないといけない時間的制約もあります。

このような場合、検診を受ける1歳6ヶ月児には泣いてもらいます。泣くといっても厳しい言葉をかけたり、暴力を振るうということではもちろんありません。どうするかといいますと、検診時、親御さんに子供を抱えてもらい、子供を仰向けにさせるのです。子供の体は親御さんに支えてもらいながら、子供の後頭部を僕の膝の上にのせてもらうわけです。子供としては、いきなり仰向けにされるため“一体何をされるのであろう?”という不安から泣き出してしまいます。その時がチャンスです。泣くということは口を開けてくれるということでもあります。この泣いた瞬間を見逃さず、直ちにミラーを口の中に入れ、歯や口の中の異常がないかチェックするのです。

おかげで、歯科検診の場は子供たちの泣き声で賑やかそのものです。同じ検診でも3歳児健康診断の際の歯科検診とは対照的です。3歳児の場合は、言葉によるコミュニケーションが出来る年齢でもありますから、ほとんどの子供が口を素直に開けてくれ、実に静かな雰囲気ではあるのですが、1歳6ヶ月児の場合は、仕方なく泣いてもらっています。

ただし、検診が終われば直ぐに泣き止んでくれるもの。検診が終わり、僕が“バイバイ”と言って手を振ると、直前まで泣いていた子供も“バイバイ”と手を振ってくれます。

子供ってかわいいものだなあと改めて感じる瞬間です。


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