歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年04月06日(金) お持ち帰りを考える

昨日、午前中の診療が終わり、自宅に戻った歯医者そうさん。居間のテレビを何気なく見ていると、画面にワイドショー番組。放送の中で某芸能リポーターがある男性アイドルがかつてコンパをした後、“お持ち帰り”をしたことがあることを話していました。何とも下世話な、ワイドショーらしい内容であったのですが、現在春休み中、一昨日9歳になったばかりの上のチビも見ておりました。上のチビは僕が帰ってきたのを見て、尋ねてきました。

「パパ、“お持ち帰り”って一体何のこと?」

思わず答えに窮してしまいました。

「大人のおもちゃって一体何なの?」
以来の答えに困る質問でした。

いつか“お持ち帰り”の意味がわかってくるだろうとは思うのですが、本当のことを言うにはまだ早すぎる年齢でもあります。
「お土産のことだよ。何かお土産をもらって帰ったということじゃない?」と答えておきました。
「ふ〜ん、なるほどね」と納得した顔つきの上のチビ。

こういった特殊な意味の“お持ち帰り”はともかく、本来の“お持ち帰り”は誰でも楽しみにするものではないでしょうか?
例えば、小さい子供の場合。小さい子供がレストランでお子様ランチを注文した際、必ずついてくるのが景品です。最近のお子様ランチには、単価がかなり安いであろう、どこか外国製であることは間違いのない、子供が喜ぶおもちゃがついているもの。小さい子供はこの景品をゲットすることが目的でお子様ランチを注文するくらいですが、単にお子様ランチを食べるだけでなく、一種のお土産として“お持ち帰り”ができる楽しさを、小さい子供は知っている。このことを見事についたのがお子様ランチだと思います。

“お持ち帰り”は何も小さな子供だけが喜ぶ物ではありません。大の大人においても”お持ち帰り”は楽しみにするものです。
レストラン、中華料理店などで食べきれない物を持ち帰ることができるというのは、もったいないという意味合いもあるでしょうが、心の底には何か得した気持ちになるものです。中華料理店などで用意される折り詰めなどは”お持ち帰り”そのものです。
ちなみに、アメリカではレストランでの残り物をドジーバッグと呼ばれる袋に入れて持って帰ることができる場合があるとのこと。さながら日本の折り詰めですが、ドギーバッグとはdoggie bag。犬の食べ残しを入れる袋というところから派生してできた言葉のようですが、言葉が発するイメージでは何か夢もへったくれもないようなイメージに見えてしまいますね。

“お持ち帰り”は何も若い人だけが楽しみにするものではありません。人生の先輩である高齢の方にとっても”お持ち帰り”は楽しみにするものであります。いや、むしろ子供以上に喜ぶ場合もあるくらいです。

かつて、僕が所属する地元歯科医師会では、地元の市とタイアップして健康に関するイベントを行ったことがあります。その際、動員をお願いするため、僕は地元の市の関係者と共に、事前に地元の老人クラブ連合会の代表の人と会う機会がありました。その際、地元の市の担当者が興味深いことを言っていました。

「高齢者の方をイベントに動員するには、イベントに参加すると必ず“お持ち帰り”があることを事前に知らせてあげることです。鉛筆1本やメモ帳一冊、うちわ一つ等等、何でもいいんです。そうしますと、高齢の方というのは、喜んでイベントに参加されるものなのです。”お持ち帰り”目当てでね。」

果たして結果はそのとおりとなりました。事前に老人クラブ連合会の担当者に”お持ち帰り”があることを伝えると、担当者は老人クラブ連合会の会員に積極的にイベントのPRをしてくれました。
いざ幕が上がると、数多くの高齢者の方がイベントに参加されました。中には“本当に歩くことができるのか?”と言いたくなるような、歩行困難だと思われる高齢者でさえ、イベント会場の階段を必死に上がられていた姿を目にしました。
“そこまでしてイベントに参加するのか?”と思われるくらいの気合です。地元市の担当者の話はうそではありませんでした。高齢者が体をはってイベントに参加した、そのモチベーションには、”お持ち帰り”の効果があったのは間違いありませんでした。

老若男女、誰もが楽しみにする“お持ち帰り”。
歯医者での”お持ち帰り”はどうでしょうか?
歯医者と“お持ち帰り”というイメージに結びつかないということが第一かもしれませんが、本来、歯の治療のために取り除いた金属の被せ歯、詰め物、抜歯した歯などは全て患者さんの物です。僕はこれらの物が治療で取り除いた場合、必ず患者さんにどうするか尋ねます。

「“お持ち帰り”なさいますか?」

幼少の子供には抜歯した乳歯やなどは”お持ち帰り”される親御さん、子供が多いように思えます。それに対し、大人の場合、“お持ち帰り”は少数ですね。


ちなみに、日記冒頭の“お持ち帰り”ですが、僕は今までいわゆる”お持ち帰り”をしたことはありません。何せ僕は奥手ですから。
いきなり初対面の女の子を口説き、その女の子を何処かへ連れて行くような”お持ち帰り”はできませんでしたねえ。
あまり人に勧められるような”お持ち帰り”ではありませんけども、一度くらい経験してもよかったなあとも思う、今日この頃。


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