2006年12月06日(水) |
歯の変色、着色について その3 治療法 |
むし歯による歯の着色の場合、当然のことながらむし歯の治療を行います。むし歯で侵された歯質を取り除き、歯の色に近いレジン充填材で充填することにより着色を取り除くことが必要です。 ただし、レジン充填材は時間が経過すると共に変色したり、着色しやすくなります。そのような場合、詰め物を詰め直したり、表面を専用の研磨材で研磨することにより変色や着色を取り除くことになります。
歯の神経を取った歯の場合はどうでしょう?いくつか方法があるのですが、歯そのものをできるだけ残すといった点で考えると漂白という方法があります。これはある種の漂白材料を歯の内部や歯の表面に作用させ、変色した歯質を白くするという方法で、現在ではホワイトニングと呼ばれることが多いです。歯科医院で行う漂白と、家庭で行う漂白の二種類を併用して漂白を行うことが多いようです。 最近では、歯のマニキュアのような充填材も存在します。これは変色した歯の表面にレジン充填材を塗布するもので、さながら爪に塗るマニキュアのように行います。この処置は歯医者が行いますが、漂白するには時間がないけれども何とか歯の色を白くしたいといった場合、有効な処置です。欠点としては、長持ちしないということです。数ヶ月程度しか持たないと言われていますが、結婚式を直前に控え歯の色を白くしたいといったような患者さんの場合、有効です。僕自身、そのような患者さんに何回か歯のマニキュアのような充填材を塗布してきましたが、いずれも好評でした。 ちなみに歯のマニキュアのような充填材はあくまでも歯科医院専用の充填材です。通販カタログで掲載されるような代物ではないことを断っておきます。 これら漂白処置によって効果がない場合には、歯の表面を削ってレジンと呼ばれる修復材料を詰めたり、ラミネートベニアという殻状のセラミック材料を貼り付ける方法、歯全体を削り被せ歯をしてしまう方法などがあります。それぞれの処置は向き、不向きがあります。患者さんの歯質、かみ合わせ、歯並びなどによってできる処置、出来ない処置があることを理解してほしいと思います。
テトラサイクリンと呼ばれる抗生物質による副作用による変色や歯牙フッ素症による歯の変色の場合はどうでしょう?これらの歯の場合は漂白は効果が期待できない場合が多いのです。こうした歯の場合、歯を白くするには、歯全体を削って被せ歯にしたり、先ほども書いたように歯の表面を削り、ラミネートベニアによる修復方法により歯を白くすることや歯全体を削り被せ歯にするようなことにより歯を白くすることになるでしょう。
歯の着色がステインによるものの場合はどうでしょう? 最近、歯の着色を取ることを謳い文句にいくつかの歯磨き粉会社から歯のステイン、着色除去を目的とした歯磨き粉が販売されています。このような歯磨き粉の効果ですが、歯の汚れがひどくないような場合は効果があるとは思いますが、こびりついているような場合には効果がありません。むしろ、こだわって使い続けていると歯の着色というよりも、歯そのものを削ってしまうリスクさえあります。 そのような場合、歯科専用の研磨材を使用して着色を取ることが一番です。 最近、歯科医院ではPMTCと呼ばれることが行われています。PMTCとはProfessional Mechanical Tooth Cleaningの略で、専門家による歯の清掃とでも言うべき処置です。歯に優しい何種類かの研磨材を使用し、専用の器具を用いて歯の汚れを取っていくのです。粒子の粗い研磨材から粒子の細かい研磨材を使用していくことにより歯の汚れをとるばかりか、歯の表面の傷をならすことができ、再度の歯の着色をしにくくなるようにしているのです。多くの歯科医院では歯磨き指導や歯石を除去した後などにこのPMTCが行われています。単に歯の着色を取るだけでなく、なるべく歯の汚れが付かないようにすることも目的と言えるでしょう。 そうそう、先日某歯科材料展示会ではステインを取り除く消しゴムみたいなものも販売されていました。これなどはなかなかのアイデア商品ではあると思いますが、歯磨き粉と同様、歯医者の管理の下に使わないと歯そのものを傷つけることになりますから注意が必要でしょう。
歯の変色、着色が飲食物による影響が強い場合、これら飲食物の摂取量を控える必要があります。以前、僕が担当した患者さんの中には一日にコーヒーを10杯以上飲む人がいましたが、その人の歯の表面は常に着色していました。このような場合、コーヒーの飲用を少し控えてもらうことも歯の着色を防ぐには必要です。
口呼吸や唇が閉じにくいような人の場合は、意識して口を閉鎖し、鼻で息をするような意識づけが必要となります。すなわち、唇を閉じて口の中が常に唾液によって乾燥しないような意識づけが必要だということです。場合によっては、口呼吸や唇が閉じやすくなるような処置が必要となることもあります。
以上、歯の着色について長々と書いてきましたが、注意して欲しいことがあります。それは、歯の変色、着色を取り除く処置は保険治療が効かないものが大半であるということです。保険治療はむし歯や歯周病の治療や特定の材料による処置、PMTCについては認められていますが、漂白や歯のマニキュアのような充填材、ラミネートベニアやメタルボンド冠と呼ばれるセラミックの前装されている被せ歯などの処置は自費となります。治療を行うにあたり、どの程度の治療費がかかるものか、患者さん側もあらかじめ歯医者側に質問をしておくことも大切だと思います。治療を行ったけれども、治療後に請求された金額に驚いたなんてことがないようにしたいものです。
歯の色は元々全く白いというものではありません。どんな人も歯もやや黄色かかっているものなのです。元北海道日本ハムファイターズの新庄選手の歯のような、便器のような白さの歯というのは天然の歯においてはありえないということを知っておいて欲しいと思います。 歯の色は顔の色や歯を支えている歯肉の色によっても影響をうけます。歯肉が歯周病でないピンク色を呈している場合、歯の色もより白く見えるものです。女性の場合であればメークによっても影響を受けます。 個人的には、むし歯や歯周病でない限り、多少の歯の変色、着色は気にしなくてもいいのではないかと考えていますが、こればかりは個人の価値観の違いですね。
いずれにせよ、歯の着色、変色で悩んでいる方は、歯の専門家である歯医者のもとを訪ねて欲しいと思います。専門家の目で歯の着色、変色の原因が何であるかを見極め、適切な処置、観察をしていくことが肝要だと思います。
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