2006年04月10日(月) |
高橋尚成投手の顔面骨折について |
ワールドベースボールクラシック(WBC)で日本代表が優勝したこともあってでしょうか、プロ野球が開幕してから球場へ足を運ぶ観客はどこの球場とも前年より増えているそうです。昨今、プロ野球の球団合併問題に端を発して以来、プロ野球の人気が落ちたことは皆さんもご存知のことと思いますが、WBC優勝の勢いがそのままプロ野球人気を復活させ、維持できるのか見物です。
そんなプロ野球が開幕してからショッキングなことが起こりました。それは、読売ジャイアンツのピッチャー高橋尚成投手がヤクルトの青木選手のファウル打球が顔面にまともに当たったというニュースです。プレー中ではなく、ベンチで試合を見ていた中での突然のハプニングです。何とも運がなかったとしか言いようがありません。
そんな高橋尚成投手ですが、報道によれば右頬骨折だったそうで、早速手術が行われ、一週間程度の入院で済むのだとか。思ったよりも復帰が近くなるということで、本人はおろか読売ジャイアンツの原監督や関係者もほっと胸をなでおろしているのではないでしょうか?
さて、右頬骨折なのに一週間程度の入院で済むということですが、どうしてそのようになったのでしょう。おそらく、高橋尚成投手が骨折した状態に近い思われるレントゲンCT写真がこれだと思われます。この写真では左側の頬骨の頬骨弓という部分が陥没しているのがよくわかると思います。
骨折の処置は通常、骨折した部位を元にあった位置に戻す整復という処置とその位置で骨折した部位をくっつける固定という処置が行われるます。顔面の骨の場合も同様で、骨折した部位を元にもどし、その部分をチタン製のプレート、スクリューを用い、骨が動かないように固定し、骨が骨芽細胞によってくっつくのを待つのです。(ちなみに、これがそのチタン製のプレートです。多種多様です。)
下顎が関係した骨折の場合は更に複雑で、噛みあわせが狂ってしまう可能性がありますので、上下の歯にシーネという器具とワイヤーを用い、口を動かさないように固定してしまうことがあります。顎にはギブスを装着することができませんから上下の歯をワイヤーを用いて固定し、口を開かないようにせざるをえないのです。
頬骨の頬骨弓の場合、通常は落ち込んだ骨を元に戻すとそのままにしておきます。側頭部の皮膚に切開を入れ、挺子と呼ばれる外科器具を骨折部位に入れ、整復するだけです。チタン製のプレートやスクリューを用いずに整復のみで自然と骨折部位がくっつくのを待つのが普通なのです。骨が弓状になっていることから整復しただけでも骨折部位が安定しやすいためだろうと思われます。当然のことながら骨折した頬骨弓に相当する部位は絶対に安静にしておかなければいけないのですが、整復するだけですから手術時間は短時間で済むのは大きな利点となります。
思わぬ打球による頬骨骨折で最もショックを受けたのは高橋尚成投手自身でしょうが、一週間程度の入院で済むというのは不幸中の幸いと言えるでしょう。少しでも早い骨折部位の快復を願っています。そして、我が阪神タイガースのライバルとしての勇姿を一日も早く見せてほしいものです。
|