歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2005年10月18日(火) 画期的なむし歯治療法?3Mix-MP法について その2

3Mix-MP法の3種類の薬ですが、それぞれ単独では厚生労働省によって認可された正式な薬です。

メトロニダゾールは膣トリコモナス症の原因であるトリコモナス原虫に対する特効薬として名をはせた薬です。ミノサイクリンとは比較的安全性が高く、副作用 が少ないと言われている抗菌剤のこと。シプロフキサンとは生物学兵器の代表として有名な炭疽菌に効果のある抗菌剤として有名です。
ところが、これら3種類の薬はむし歯の治療を前提として開発された薬ではないので、むし歯に対する効能は厚生労働省によって認められていません。これら3種類の薬は、多くの歯科臨床の場においてむし歯に対する効果があることが判明してきており、厚生労働省もその効能について知らないことはないのですが、現時点においてこれら3種類の薬をむし歯の治療として用いることは正式に認めていないのです。

昨日の日記で、3Mix法は3種類の薬の合剤を用いた20年以上の歴史がある治療法であることを書きましたが、それほど歴史がある治療法であるにもかかわらず、これまであまり知られていなかった理由がここにあります。実際に治療効果が基礎的研究、臨床研究で幅広く確かめられているものの、厚生労働省の正式認可を受けていないため、3Mixである3種類の薬の合剤によるむし歯治療法を大っぴらにして治療できる状況ではなかったのです。3Mix法は知る歯医者ぞ知る治療法として静かに歯科界で広がらざるをえなかったのです。そのような事情があったにも関わらず、今回急にマスコミに何度も取り上げられているという状況に歯科界は困惑しているのが現状です。 3Mixと呼ばれる3種類の薬の合剤によるむし歯の治療方法が厚生労働省によって認められていないということは、3Mix-MP法も同様であり、保険治療でも認められていないということにもなります。

今後の展開でどのようなことになるかはわかりませんが、現時点においては3Mix-MP法による治療法は自費診療となります。 通常、むし歯の治療のために詰め物や被せ歯を詰めたりセットしたりすることは保険治療で認められていますが、3Mix-MP法を行なった後に詰め物や被せ歯を詰めたり、セットしたりすることは保険治療ではできません。なぜなら、厚生労働省は保険治療と自費治療との混合治療を認めていないからです。現在の規制緩和の流れで混合治療の解禁が議論に上がっているわけですが、現時点では混合治療は原則として認められていません。3Mix-MP法による治療を行なう場合、詰め物や被せ歯に至るまでの治療は全て自費治療となるのです。自費治療ですから保険治療に比べかなりの高額治療になるわけです。このことはマスコミでは充分に伝えられていません。3Mix-MP法の記事を読んだ人は、歯を削らない治療だから治療代も安くなると考えられている方もいらっしゃるかもしれ ませんが、実際の治療は自費で、高額になっても仕方がないことを理解して頂きたいと思います。

昨日の日記で、僕は3Mix-MP法の3Mix-MPとは3Mixと呼ばれる3種類の薬の合剤にMPであるマクロゴールとプロピレングリコールを合わせたものだと書きました。実は、3Mixである3種類の薬の合剤はむし歯に対する治療の基礎的研究、臨床研究の蓄積があるのですが、マクロゴールとプロピレングリコールには基礎的研究、臨床的研究の蓄積がありません。マクロゴールやプロプレングリコールにはむし歯菌に対する薬理効果はありません。しかも、長期 間歯の中で貼付されることによる影響がどのようなものか解明されていないのが実情です。これらマクロゴールやプロプレングリコールは一般医療でも広く使われている薬ではあるのですが、まだ生体内、特に歯の中で長期に保持されることでどのような変化が起こるかどうか科学的裏づけがなされていないのです。今回 の一連の報道において、この点を指摘している報道は一つもありません。医療に関する報道は慎重の上にも慎重を重ね、治療法を様々な角度から冷静に報道して欲しいと思うのですが、今回の一連の3Mix-MP法に報道の中にマクロゴールとプロピレングリコールの懸念に関する報道がないということは、マスコミ報道に大きな落ち度があるといっても仕方がありません。

以上、2日間にわたる長文になりましたが、最近報道されている3Mix-MP法に関し、僕が感じたことを思いつくままに書いてみました。 3Mix-MP法に関心のある方の参考になれば幸いです。


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