DiaryINDEX|
past|
will
2023年08月16日(水) |
おかえりなさい、あなたの帰りを待ってたよ |
初夏に毎日のように雷雨に見舞われた。それが終わってからりと晴れた夏本番がやってきた頃、庭に放置してたバケツの中に新しい世界が広がっているのを見つけた。何度叱ってもロクちゃんが花壇を囲ってる大きな石を取ってバケツに入れてあった。そこに葡萄の木から落ちてきた葉っぱが石と交互に入ってる。そして溜まった雨水。それでちょうど池のようになってて、水の中には小さな生き物が泳いでて、蜂がよく水を飲むために石の上に停まっていた。そして尻尾だけ水に浸かって石の上でじっとしている一匹のトカゲがいた。ふ〜ん、特になんとも思わなかったが、一週間経ってもまだそこにいるのを見て、そこに住んでるのだと気付いた。葉っぱの下に隠れられるし、水に浸かることもできるし、その水の中には食べられる虫がいる。快適だったんだろう。それからコップ一杯の水をバケツに足してあげるのが朝の習慣になった。数週間したら水が大分濁ってきたので、トカゲを捕獲してバケツの水を半分だけきれいな水と変えて、また元に戻した。
すっかり愛着が沸いてたある日、ロクちゃんが突然そのバケツをひっくり返した。急いで庭に走っていったけど、もうバケツの中は空っぽ。誰もいなかった。バケツの中に石と葉っぱと水を入れて、なるべく同じような環境をリプレイスしてトカゲの帰りを待った。たまにバケツの中を覗いては誰もいないことにきゅっと寂しくなった。傍から見たらたかがトカゲ?という感じかもしれないけど、自分がいつも気に留めて世話してるものって愛着湧くものなんだ。カンカン照りの日なんか、出先でふとバケツの水がすっかり乾いてしまってないかとか気にするんだもの。たまに葡萄の葉の間にかさかさっという音を聞いてはあのトカゲが近くにいるのではないかと目を凝らしてみたけど、姿を見ることはなかった。
それから二週間ほどたったある日の夕方、庭でリュカが叫んだ。
「帰ってきたよ!!!!」
行ってみると、バケツの中に尻尾が切れて半分の長さになったトカゲがいた。どこかで猫にでも追いかけられたのか(クロちゃんは頭の良い猫だから家族のトカゲには襲いかかったりすることはない)。でも命からがら帰ってきてくれた。
コップ一杯の水をバケツに足す朝の習慣が戻った。トカゲは種類にもよるけど普通に飼育していたら5年以上生きられるらしい。すっかり新しい家族になったトカゲにそのうち名前をつけようか。