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2019年06月05日(水) |
Le temps des cerises |
いつもの散歩道でさくらんぼのようなきれいな赤い実がたわわに生っているのを見つける。昨年のこの季節は引越と結婚のことが重なって、物理的にも精神的にも余裕がなくて全然気付かなかった。家に帰って調べる。葉の付け根に赤いぽっちのような点があるのがメリジエ(Merisier, Prunus avium)で日本語ではセイヨウミザクラというものらしい。こちらで買った食べられる野生の植物の本にも載っていた。ひとつ口に入れてみる。小さくって日本のさくらんぼのような酸味がある。アメリカン・チェリーとよばれる大振りで酸味のないのより山形とかの繊細な見た目の可愛いさくらんぼが好き。よし摘んでこよう。コンフィチュールにしようか、それでパイでも焼こうか・・・。ところが手が届く範囲ではコンフィチュールにするほど収穫できない。一旦家に戻り知人の中でいちばん背の高そうな隣人のドミニクを引き連れてまた戻る。メリジエを見るなり彼が声をあげる。
「あぁ、これか!懐かしいなぁ。子供の頃、学校の帰り道によく食べたよ。この辺り一帯では珍しくもなんともないよ」
彼が腕をひょいっと伸ばして、高いところの枝を引っ張り、もう片方の手で摘み取る。結局わたしの役目は器を持って待つのみ。
「高枝ばさみでもあればもっと高いところのも採れるんだけど。あっ、それとも君を肩車してみる?」
肩車って・・・。子供なら可愛いけど、わたしがドミニクの肩に跨ってさくらんぼ採ってるなんてホラーでしかない。
まぁまぁ収穫できて家に向かう途中、もう一本メリジエの木を発見。こちらは背の低い木でわたしでも届く。たんまり収穫できた。
「たまにはいいでしょ、こういうの。買うのは簡単だけどさっ」
「うん。子供の時以来だな、こんなの。そういえば日本語ではサクランボウって言うんだよね」
「何で知ってるの???」
「だって、"ラ・ムー"っていう日本のアニメで見たもん」
どうも「うる星やつら」というトラ柄のビキニの女の子ラムちゃんが主役のアニメのことらしい。それに"サクランボウ"が登場するというのだが、後で見てみると"錯乱坊"という可愛くもなんともないお坊さんのことらしかった。
まずは白ワインで煮てみた(シナモンをひとつまみ加えて)。ポワールの白ワイン煮は大好きでよく作るのだが、メリジエは酸味が強いだけに白ワインで煮ただけではいまいち。結局汁がなくなる寸前まで煮詰めて、ブランデーをどぼりと注いでみた。出来立てはぼやけた味だったが、これが冷やすとなかなかいける。砂糖を加えてないから、料理のちょっとした添えものとしてもいいかも。摘んでくれたお礼にドミニクにもお裾分け。酒好きだからかな、彼はかなり気にいった様子だった。
(写真:今日のにゃんこ。毛糸入れてるボックスでの昼寝は定番)