My life as a cat
My life as a cat
DiaryINDEXpastwill


2009年07月09日(木) Lost in translation

仕事が忙しいのに、夕方は定時にあがってバドミントンがしたい。仕方がないので早朝に出勤して貯めに貯めた仕事の片付けにかかっていた。だだっ広いオフィスで自分のデスクのところだけ電気をつけて、大した食欲もないのに義務のようにコンビニで買ってきたおにぎりを口に運びながらPCに向かっていた。

ふと背後で声がした。

「おはようございます。」

振り返ると、アメリカに転勤したはずのAさんがピシッとスーツを着て立っていた。すらりと背が高く、しゃべってみても頭のきれる好青年。初めて見た時、心がとろけそうになったのだが、すぐにアメリカに転勤が決まってがっかりさせられた。それがまだ数ヶ月しかたっていないのにここにいる。一週間だけ帰ってきたのだという。時差ぼけで眠れないので早く来たのか。オフィスが新しくなっていて、右も左もわからないというので案内してさしあげた。早起きは三文の徳。わびしい気持ちになる早朝出勤は一瞬にしてバラ色となった。

それからは、あちらも片付けなければならない仕事がたんまりとあるようでわたしと同等、朝も夜も時間外労働に追われていた。たまに息抜きにお喋りをしてまた仕事に戻る。これが独身同士ならば、同じ時間に終わればちょっと食事をして帰ろうということにでもなるのかもしれないが、あちらは既婚者、どんなに会話がはずんでも、さようなら、また明日、と言うしかない。もっとも誘われたら誘われたで、既婚の分際で!と興ざめするのだろうが。

楽しい一週間はあっというまに過ぎ去り、戦友のような情も沸きはじめた最後の日。帰り際にバイバイを言おうと思ったのに、会議に借り出されていない。仕方なくあきらめて、バドミントンへ行った。真剣に汗を流して、みんなでわいわいもんじゃ焼きを食べていい気分で駅のホームで騒いでいたら、プラットホームの一番先端のほうにAさんを見つけた。なんという偶然なのか。近寄っていってやっとバイバイを言うことができた。

「3年後に戻ってきて、またあなたがいてくれたらいいなぁ。」

なんて言葉でまたわたしの心を溶かして去っていった。


Michelina |MAIL