教授会の決定 April,8 2045 12:45 ファンデンブルグ研究室 ヴァレンティーネ・ファンデンブルグが研究室のドアを開けると、初老の男の背が見えた。 「あら、教授、いらしてたの?」 「うむ、どうかね、ヴァレン。彼らは・・・ブラッドとアンジェラは、間に合いそうか?」 「ええ、あの2人はとても素直で飲み込みが早いわ、逸材よ」 「そうか・・・」 「立ち話もなんですから、どうぞ、お掛けになってください」 ヴァレンは、白衣のポケットから青のリボンを取り出すと口にくわえ、 自由になった両手で白銀の髪を両手で束ね、後で結んだ。 キッチンの棚から、ワイングラスを2つ取り出すと、ローゼンバーグ教授に勧めた。 「ワインはいかが?」 「いや、ワシはこれでいい」 ローゼンバーグは、白衣の内ポケットから小瓶を取り出し蓋を親指で回すと、 銀色の瓶の先を口へ運んだ。 「相変わらずですのね、教授は・・・」 ヴァレンは、グラスをそれぞれ元の場所へ戻し、下の棚のマグカップを手に取った。 保温にしていたコーヒーメーカーからガラスポットをカップに注ぐと、部屋中に香りが広がった。 「実はな、ヴァレン。ちと困ったことになってのう・・・」 「あら、教授、いかがなさいました?」 「うむ・・・昨日の教授会で・・・」 ローゼンバーグは、再び、小瓶を口に運ぶと今回の経緯を話し始めた。 「チェン教授は知っておろう」 「ええ、存じてますわ。あの中国系の派手な厚かましい女でしょう?」 「・・・ん、先のジパング派遣の件で、麻雀ならば、本場のチェン教授のゼミの学生を推すべきだ、と言い出しての」 「既に、決定事項でしょうに・・・」 「うむ、ところが、議長のヤン教授が妙にチェン教授に肩入れしとっての」 「まあ、あの色魔のオヤジときたら・・・全く見境がないのね」 「これこれ、勘ぐるでない・・・が、大きな金が動くには違いないからな・・・」 「何時なんですか? その決定戦の日程は」 「2週間後の月曜日だ。双方2名ずつの3回戦勝負と決まった」 「・・・本当に困った話だわね」 「とにかく、頑張ってくれ」 ローゼンバーグが部屋を出ると、ヴァレンは左手で頬杖をつき、大きくため息をついた。 「あと2週間か・・・彼らにはまだ、牌も触らせてないのよ・・・」 |