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昔、火を灯すと必ず骸骨が歩いて廻る厄介なランプがあった。 悪さは特にせなんだが、皆、夜道で出会っては腰を抜かし 困り果てた末、旅の坊主に なんとかしてくれるよう頼みこんだわけだ。 坊主は骸骨を見つけると早速呼びかけてみた。 「これ、そこの骸骨、お前の身はどうした」 「へい、あっしの身はからすどもにつつかれて とうにございません」 「骨だけでうろつかれても困る。 町の者、特に女子供は腰を抜かしておるではないか」 「こう見えてもあっし 身が付いてりゃ男前だったんですよ」 「魚も身がなくばせんべいにしかならん」 「あっし、骨せんべいが喉にひっかかって死にました」 「男前がまたしようもない死に方を」 「もううらめしくてうらめしくて」 「そらそうじゃろう。身も喰えん貧乏人であったか」 「いえ、浮気がバレて女房に魚の骨しか喰わせてもらえなかったんです」 「自業自得というべきか、哀れと言うべきか迷うところじゃの」 「骨になってからもああ、せめて身が喰いてえ、とそればかり考えております」 「魚くらい捕らえて喰えば良かろう」 「それがこのザマですからねえ、喰ってもぼろぼろぼろぼろ落っこちて喰った気がしねえ」 「ぜいたくを言う骸骨じゃ」 「魚の身さえ喰えば満足して行くとこ行きやしょう」 「うーむ、そう言われてものう」 坊主はしばし考えると 懐に持っていたカラカラの干し魚を取り出し 骸骨のあばら骨の一本にくくりつけた。 「腹に入れば良かろ?」 「.........」 「不満そうじゃの」 「あっしはくくりつけたいんじゃなくて喰いたいんでさ」 「よし、わかった。 ならばとれとれピチピチの大きな魚の刺身を喰わせてやろう」 「えっ!ほんとですかい!お坊様」 「おお、食べ放題じゃ」 「ラッキー!」 「ではこれをよーく結べ」 「へ?」 「だからこの縄をお前の胴によく結べと言うておる」 坊主は骸骨に有無を言わせず縛り上げると棒にブラ下げて歩き出した。 「もし、お坊様、どこへ行くんです」 「海じゃよ。大きな魚と言うなら海が良かろう」 「はあ、そりゃそうなんですが、なんであっしは棒にブラ下げられてるんです?」 「己の喰う魚くらい己が自分で釣れ」 「うわっ!わーーーーっ」 ひゅー、ドボン。 坊主は鼻唄を歌いながら骸骨で釣りを始めた。 「とーれとれのぴーちぴち〜」 「やかましいこの腐れ坊主! さっさと放さんと祟るぞ...ごぼごぼげぼ」 「餌が元気じゃとよく釣れるぞ」 「ふんがー!」 あわれ骸骨はこれまた化け物のように大きな鮫にくわえられ 必死で顎を支えている。 「たっ、助けてくれー」 「助けてくれってお前はもう死んでいる」 「魚喰わせるってこれじゃ喰われるんじゃねえですかいっ!坊主が騙したな!」 「いいや、そのまんま腹に飛び込めば刺身のバイキングじゃて」 「ひっ、ひどすぎる〜!」 骸骨はとうとうそのままバキバキ鮫に喰われてしまった。 「やれやれ、死んでも食い気に囚われておるからこのような目にあうのじゃ。 皆の者、心して暮らすがええ」 「はは、ありがとうごぜえます、お坊様」 これで夜な夜な歩く骸骨はいなくなった。 ところで、骸骨がどうなったかというと、鮫の良いカルシウムになり その丈夫な歯で海の魚を食いまくったとさ。 へっぽこぴーのぷう。
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