幻想カラス

傾きかけた夕日に
地上から生えたたくさんのビルが
片方はオレンジ色片方は漆黒の闇
せわしなく揺れる人たちは
ただせわしなく揺れているだけで
本当は怠惰な感情におぼれているそうだ

傾きかけた夕日に
地上を離れた数羽のカラスたちが
片翼はオレンジ色片翼は漆黒の闇
還る山すら失った狩人は
ただ現世をさまよう亡者となりて
本当は何かを待っている何かを待っている

空を飛ぶ彼らの影は
地上に着く前に消えてなくなる
たとえ弱くなりかけた光といえども
偉大なる太陽の輝きはけしてその誇りを失わず

カタンカタンと繰り返す
カタンカタンと振り返る
花壇の下に眠るいのちは
カバンの中で揺れる昨日に

カタンカタンと繰り返す
カタンカタンと振り返る
加算の果てに崩壊するは
河畔にうつるオレンジ色の

どこまで往くか その歌声は離れていくが
カァーカァァと響いていくが
どこまで往くか 未来がいま沈んでいくよ
ゴォーゴォォと沈んでいくよ
地平の下に堕ちていくよ

闇が訪れるたびに
世界が生まれ変わるたびに
宇宙のどこかで星が瞬くたびに
海辺で寄り添う恋人達が愛を囁くたびに
幻想カラスは舞い降りる
幻惑で飾られた世界に電飾を灯す

カァカァァ
一声鳴いた カァカァァ
両翼はすでに漆黒の闇
怠惰な感情の中に夢を見る
幻想カラスの夢を見る

カァカァァ
二声鳴いた カァカァァ
夢見た先にも漆黒の闇
幻想カラスはうすっぺらな
希望を抱いてまた夢を見る

世界の崩壊は
どこかでもう始まっているらしい







ぼくのせかいはひろがっていきます。ひろがればひろがるほど、ことばはふくらんでいきます。