月・滅・覆・闇

暗闇だというのに影が出ている
そうだこれは夜だ夜の世界だ
うすっぺらい月は今にも消えてしまいそうで
最後に残ったわずかな力で僕の影を守っている

暗闇のなかで影が震えている
そうだこれは夜だ夜の世界だ
頼りない光は揺らぎ揺らぎが感情をつくりだし
最後に残ったわずかな願いが今日も世界を守っている

見えるか見えないかの狭間には
地平線ノスタルジアの鼓動
記憶の中にだけ生きる旋律は
アナーキーに響く鼓膜の中に住まう獣

生けとし生けるものよこの暗闇に祝福の歌を
生けとし生けるものよこの静寂に喚起の声を
生けとし生けるものよ終わりゆくは涙ばかり
生けとし生けるものよ形あるものが壊れた後
最後に残ったわずかな言葉でまだ世界を救えると信じている

手のひらに触れる大地の感触はまだ形ある世界
そのさき光の届かない指先から
世界は溶け出しているようだ

あまりにも頼りない光に揺らぐ影は不確かさを増長させて
次第にほぐれていく臨界線
均一を好む世界の秩序が勢力を伸ばして
うすっぺらい月は加速度的にゼロへと近づいていく

見えるか見えないかの狭間には
地平線ノスタルジアの鼓動
愛染するのが人間の性ならば
闇に堕ちる世界でいったい何を想えばいいのか






ぼくのせかいはひろがっていきます。ひろがればひろがるほど、ことばはふくらんでいきます。