月に舞う桜
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日常生活の基本的なこと(移乗、更衣、排泄、食事の準備、入浴など)に介助が必要な人生だと、独りで丸一日を過ごすことが不可能だ。 この先、死ぬまでずっとそうなのだと考えると、ぞっとする。 (私が生きているうちに、人間並みに介助ができるロボットは開発されないだろう)
独りで丸一日を過ごすことが不可能なのは、配偶者と生涯添い遂げなければならないとか、子育て中だから独りの時間がないといったような、自分で何か人生を選択した結果、そうなったのではない。 私はただ、生まれさせられただけだ。
何がぞっとするって、これが解決できない事柄であり、生きている限りこれだということだ。 今は家族がいる。もし家族がいなければ、ヘルパーを頼んだり施設に入ったりしなければならない。どのみち、同じことだ。
今日は、家族が出払って、ほんの2時間弱だが家に独りでいられる時間があった。 この時間が永遠に続けばいいのにと、心底願った。 静かな家の中で、お腹も空かず、トイレに行きたくもならず、疲れもせず、ただ独りでずっと本を読んで過ごせればいいのに。死ぬことが許されるその日まで。
けれど、そんな独りの時間はすぐに終わってしまうのが現実だ。 私は、日常生活全般に介助がいるから、誰かしらと関わらなければ生きていけない。それは、ものすごく面倒くさく、疲れることだ。
死ぬまで、丸一日を独りで過ごすことが不可能な人生、本当にぞっとする。
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