月に舞う桜
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2021年01月18日(月) |
【本】村田沙耶香『余命』 |
村田沙耶香『殺人出産』(講談社)読了。
表題作よりも、最後に収録されている、たった4ページの短編『余命』がとても良かった。 医療が発達して、病死も老衰も事故死も他殺もない世界。 死は自然にはやって来ないので、みな、「そろそろかな」と思った好きなときに好きな方法で死ぬ。 200歳生きて、まだまだ生きたいと思う人もいれば、10歳くらいで「そろそろかな」と思って死ぬ子どももいる。 役所で蘇生拒否手続きをして死亡許可証を貰うと、薬局で死ぬ薬も買える。苦しまずに死ねる。 本屋には、様々な死に方を指南した本が並ぶ。 不死の時代が来るなんて絶対に嫌だと思っていたけれど、意に反した死はなく自分で死ぬタイミングと方法をコントロールできて、しかも他人からとやかく言われず協力してもらえるなら、それはいいな。 好きなときに好きな方法で苦しまずに死ねる世界は、理想郷。
『殺人出産』に収録されている中では、『余命』の他に『トリプル』も良かった。 しっかり村田沙耶香ワールドでありつつ、恋愛小説の要素が多分にあって。
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