月に舞う桜
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2020年12月30日(水) |
【本】平野啓一郎『決壊』 |
平野啓一郎『決壊』(新潮文庫)読了。
年の瀬に、ものすごい小説を読んでしまった。 気軽に感想を書くのは躊躇われるほど。 絶望的に哀しく、でも生の確かな真実が散りばめられている。 生は本質的に孤独で、そして家族というものは、その孤独を癒すどころか、時として逆に孤独を深めもする。
病とは、幸福とは、何か。赦しはありえるのか。
自分を殺すか他者を殺すことでしか、人間社会システムからの〈離脱〉は不可能なのだろうか。別の仕方で、〈離脱〉する方法があればいいのに。
ある登場人物が「産まんかったら、こんなことにならんかったやろう?」と言った。それはおそらく深い悲しみと混乱ゆえなのだが、しかし、その言葉は真実を突いている。 人が人を生み出すこと、それがあらゆる悲劇の始まりだ。
……と、いろいろなことを考えずにはいられず、動けなくなるような小説だった。
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