月に舞う桜
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例えば行きたい場所があるとして、そこに何らかの物理的なバリアがあるとして、人に頼めば手を貸してくれるだろう状況でも、頼むことすら精神的に疲れてしまって諦めざるを得ないことがある。 たくさんの人の力を借りてでも、どんな手段を使ってでも行きたい! と思って行ける時もあるし、諦めざるを得ないという事実をすんなり受け入れられることもある。 ただ、いったん立ち止まって考えてしまうと、周囲の人(それが見知らぬ誰かであろうと、近しい人であろうと)に助けてもらうことも、不測の事態が起きないように人より入念に準備することも、もういろんなことが重荷に思えてしまうことが、少なからずある。
そんなふうに疲弊する自分や、諦めざるを得ない状況に、絶望する。
けれど、絶望するのは、例えばそこにある物理的なバリアのせいではなくて、疲弊して動けずにいる自分自身を心のどこかで許せていないからかもしれない。
おそらく、私は、諦めてもいいんだよと誰かに言ってほしいのだ。 頑張ることや諦めないことや壁を乗り越えることがもてはやされる世の中にあって、それでも、別に諦めたっていいじゃないかと、笑い飛ばしてほしいのだと思う。
それができるのは……それをすべきなのは、他の誰でもなく私自身なのだろうけれど。
諦めたって、いいんだよ。悪いのは私ではなくて、そこにある、たった1段の段差なんだから。
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