月に舞う桜
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この夏からだろうか。
疲れやすくなった、と思う。仕事内容も帰宅時間も変わらないのに、帰ったらぐったりしてしまう。 休みの日は、遅くまで眠っている。起きても、グダグダしている時間が長くて、活動時間が短くなる。
それに、些細なことでイライラする。 何か重大な出来事があってドカンと怒りが爆発するんじゃなく、本当に取るに足らないきっかけで、心の底にうっすらとイライラが降り積もっていく。
他人の負の感情にさらされるのは、とても疲れる。それが、自分に向けられた感情でなくても。
どうして他人のことをそんなふうに言えるの?
あなたにいったい何が分かるの?
あたしに向けられたやさしい言葉の裏にも、もしかしてそんな悪意が潜んでるの?
分かってるよ。 あなたが見たい「あたし」じゃなきゃ、そのやさしさを向けてはもらえないんだろう。 「そうじゃない、あたし」が垣間見えた瞬間、きっと手の平返されるんだろう。
分かってるよ。 他人のすべてを受け入れるなんて、無理な話だもの。
ひとりになりたいと思って、そうなれる場所へ向かっていたら、「誰かが一緒の方が良いんじゃないの?」と言う奴がいる。
その言葉は、私が置かれた立場を象徴している気がした。
ねえ、あたしのこと、なめてんの?
ウザいんだよ。
自由にやらせてよ。
常に誰かと居なきゃならないなんて、どれほど苦痛なことか。 ひとりになれることが、どれだけ偉大な自由であることか。
お前には、それが分からないんだろう。
だったら、黙ってな。
もっとやさしくあれたらいいのに。 もっと広い心で、すべてを許容して、受け止められたらいいのに。 もっと、いろんなことををテキパキこなせればいいのに。
やさしい人はたくさんいるよ。愛してくれる人も、理解してくれる人も。 愛しいものも、たくさんあるよ。支えも光も。
でも、私も世の中も、やさしくなさすぎる。
聞きたくないこと、見たくないもの、取り込まれたくない感情。 それらにさらされて、疲弊してしまう。
ウザいんだよ。
自由にやらせてよ。
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