月に舞う桜

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2008年12月18日(木) 一週間早いクリスマスプレゼント from TOSHI<2>

TOSHI with T-EARTH CHRISTMAS LIVE in TOKYO 2DAYS
の続き。

セットリスト(多少あやふや)↓

Prelude(SE)
なげきのHEART
悲しみの果て
暗くなってる場合じゃない
FEEL YOUR LOVE
永遠に旅すること(with TIERRA)
BEAUTIFUL WORLD(TOSHI HEALING)
EARTH IN THE DARK
傷つきこわれてしまわぬように
SAY GOODBYE TO YESTERDAY
海になりたい
未来の君に
大切なもの

アンコール
なげきのHEART(英語Ver.)
FIRE CITY


「海になりたい」の2番で、なんと涙で歌えなくなってしまったTOSHIくん。かろうじてサビは歌い上げたけれど、曲が終わってからも涙を拭いたり鼻を押さえたりしていた。
歌が途切れて客席から「TOSHIくん、頑張れー!」などと声がかかる中、私は声を詰まらせたボーカリストの姿に無言で見入ってしまった。
大人の男性が見せる涙は、ちょっと心惹かれるものがある。

曲が終って、TOSHIは照れ笑い交じりに言った。

TOSHI「すみません、感極まってしまった。すごい歌だなあ。あまりに良い曲で……こんなふうに生きれたらと思いますが、なかなか……。いやー、いい曲だ」

客を前にしたステージで、感極まって泣いてしまい、何小節も歌えなくなる。それは、プロとしては減点なのかもしれない。
でも、ボーカリストにここまで感情移入してもらえるって、曲の創り手としては栄誉なことではないだろうか。そんなことを、ふと思った。
私は、MASAYAの音楽、特に作詞をあまり評価していない。複雑な感情を脇へ置いて純粋に歌だけを見ても、だ。曲自体は良いものもあるけれど、詞は……正直言って、言葉が貧弱だと思う。うまく曲に乗っていない印象を受けることも多々あるし、使い古された単語を多用されても薄っぺらになるだけで、言葉に込められているはずの想いの厚みが感じられない。
でも、「海になりたい」は確かにいい曲だ。真摯な祈りが、伝わってくるから。
創り手の想いを自分の中に取り込んで、ボーカリストが表現する。それを、私たちが聴いて感じ、想いを共有する。曲が三者をつなぐ瞬間、「感極まって歌えなくなってしまう」ことすらも、私たちをつなぐものの一部なのかもしれない。
何はともあれ、セカンドアルバムで一番好きなこの曲が不完全だったのは非常に残念なので、次の機会にはぜひとも、きちんとしたフルコーラスを生で聴いてみたいものだ。

「大切なもの」は、TOSHIがギターを持って、アルバムより元気な印象。
曲が始まるとすぐ、天井から色とりどりの風船が大量に降ってきた。

アンコールで出てきたTOSHIから、思いもよらぬビッグサプライズが告げられた。

TOSHI「今日はクリスマス・ライブということで、みんなにプレゼントがあります」
客席「えー、なにぃー?」
TOSHI「何って訊くな!」

おお! 出たよ、ダークTOSHIが!
そのあとも、客席からの「TOSHIくんがほしいー!!」なんて熱い声も、「話しかけるんじゃねーよ」と冷たく斬りつつ、言葉とは裏腹にちょっぴり嬉しそうに笑顔なTOSHIくん。

TOSHI「実は、これからプロモーションビデオの公開収録をやります」

あまりに突然のことで、事態をうまく飲み込めない私たち……私だけか?
どうやら、TOSHI with T-EARTHは海外進出を目論んでいるらしく、手始めにフランスに行くらしい。で、フランス進出向けに「なげきのHEART」の英語バージョンのPVを撮るということのようだ。

PVの撮影に参加できるなんて、すげービッグ・プレゼントなんですけど!!

TOSHI「みんな、できる? パリのやつらが見てるからな、JAPANの力をみせてやれ!!」
客席「いまー!? いま見てるの!?」
TOSHI「いまじゃねーよ」

いや、いまのはTOSHIくんの言い方が悪いです。
「見てる」なんて言ったら、パリに生中継されてるのかと思うじゃん。
私だって「生かよっ!」って勘違いして、緊張しちゃったもん。

「なげきのHEART」は日本語でもなんて歌ってるかよく分からないのに、英語になったらさらに不明になりまして。
でも、そんなことは関係なく、ペンライトと風船を振って思い切り盛り上がる。
パリっ子に衝撃を与えられるPVに仕上がってるといいなあ。

で、最終曲は「FIRE CITY」
この曲は最高に盛り上がって、会場中が弾ける。Xで言うところの「X」みたい。「悔い残すなよ!」……とは言われなかったけど、そのつもりで叫んだ。

こうして、ライブは幕を閉じた。
さあ、続いてサイン会ですよ。
ロビーにできた列に並んで、サインしてもらうものを用意しながら、ちょっとずつ進む。
私の前に並んでいた女の子は、メイクを直していた。その気合の入り方が、微笑ましかった。そうだよね、これからTOSHIくんの目の前に行くんだもん、きれいな顔で会いたいよね。
でも、私は前に進みながらポーチを出して化粧直しできるほど器用じゃないし、TOSHIくんの前にいるのなんて一瞬だろうってことで、何もしませんでしたが。

ZEPPのときは、TOSHIのいる場所には握手会に並んでいる人しか入れないようになっていた。
が、今回はサイン会に参加していない人も普通に行き来している場所、ロビーのドリンク売り場のすぐ脇に、机がありまして。TOSHIがサインしているすぐ近くに、ベンチに座ってジュースを飲んでいる人たちがいるわけですよ。なんか別にTOSHIに注目するでもなく、普通な顔で。
えーと、XJAPANのボーカルがこんなところでサイン会やってるなんて、シュールと言うかなんと言うか……。特別感がなさすぎやしねーか。

とか何とか思っているうちに、私の番が来た。
差し出したマウスパッドに、TOSHIが銀色のペンでさらさらっとサインする。

桜井「ありがとうございます」

そう言って頭を下げて、マウスパッドを受け取った。間近に見るTOSHIくん、髪の毛がやけに膨らんでるよー、そのチェックのジャケットはあんまり良くないよー、黒の方がかっこいいのに……なんて、心の中で呟きながら。
今日はサインだけで、握手はないんだろうと思っていた。
が、しかし! TOSHIくんが右手を差し出している。
握手しながら、

TOSHI「またね」

って。

えへ。

もし気の置けない親友に報告したら、きっと「そんなの、みんなに言ってるんだよ」って一蹴されるんだろう。実際、ZEPPのあとに「『来てくれてありがとね』って言われちゃった」って話したら、そう冷たく言い放たれたもの。

でも、いいの。みんなに言ってるなんて、百も承知さ。
TOSHIが「またね」って言うなら、また会いに行くまでのこと。
本音を言うと、今回のライブはなぜか完全に陶酔し切ることができなかった。ほぼ、最初から最後まで。
ライブ後、「あー、Xのライブに行きたいなあ」なんて思ってしまった。
でも、TOSHIの「またね」の一言で、私はまたT-EARTHのライブに来ようと決めた。たった一言で。

ZEPPに比べたら、TOSHIくんを前にしてもかなり落ち着いていたと思う。やっぱり、慣れたらしい。
私に会うのは2回目だけど、TOSHIくんは私のこと覚えてくれたかしら。数え切れないほどのファンと接してるから、2回じゃ覚えられないかもしれないけれど、「この車椅子の子、前も来たことある気がするな」くらいに思ってくれたら、嬉しいです。
障害があって車椅子を使わないと生活できないのは、確かなハンデだけど、こういうときはハンデがアドバンテージになる、と思う。
「またね」と言うなら、嫌でも覚えてしまうくらい、会いに行ってやる。

マウスパッドは、以前からちょうどほしいと思っていた。
だけど、サインしてもらったら、使えないのよね。その上でマウスを動かしてサインが削れてしまったら、嫌だもん。
それにしても、サインってやっぱりわけ分らん。日付を入れてくれてるのは、分かる。かろうじて、「T」も分かる。しかし、どこが「O」でどこが「S」やら……。
何はともあれ、9月に初めて握手して、今回はこうして無事にサインももらえたし、もう思い残すことがないなあ。
あとは、ハグぐらいか!?

会場を出ると、雨は上がっていた。
寒いのは相変わらず。でも、心はあったか。
一週間早いクリスマスプレゼント、どうもありがとね。

Merry Christmas!


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