月に舞う桜
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| 2007年12月24日(月) |
神の言葉より、人の想い |
クリスマスということで、少しは敬虔な気持ちになるかと思い『パッション』のDVDを借りてきた。 監督のメル・ギブソンが構想に長い歳月を費やし、私財を投じて制作したという映画で、キリストの最期の12時間――捕らえられてから磔になって絶命するまで――が描かれている。 イエス役の役者さんは良かった。どんなに苦しみが増しても決して信念の輝きを失わない、とても綺麗な茶色の目が印象的だった。 内容的には期待したほどではなかった。私が宗教嫌いで、どこか冷めた目で観てしまうせいかもしれないけれど。 (キリスト教の精神には見習うべき点も敬意を払うべき点もあるけれど、教会の権威や新約聖書やイエスや、それから宗教全体の強烈な盲目性はどうしても好きになれない) 全編にわたって、とにかくイエスが肉体的に苦しむ場面ばかりなのだ。あまりに鞭で打たれ続けるので、その残虐な光景にもだんだん慣れてしまって、「この役者さん、痛みでのた打ち回る演技ばかりで大変だなぁ。体中に血糊つけられちゃって、気持ち悪そうだし」などと考えてしまった。で、観終わったあとは「あー、鞭打ちの映画だったなぁ」という印象が残る。こんな私って不謹慎かしら。
回想でもいいからマグダラのマリアとの愛情や弟子たちとのエピソードがもう少し描かれていれば、感情移入できたかもしれない。 ただ、母マリアの表情には、ぐっときた。「聖母と神の子」ではなく、ごく普通の息子と母親、その間にある強くて深い愛情と哀しみが満ちていた。その描き方がとても人間味溢れていて、好感が持てたのだ。私の心の深いところに響くのは、やっぱり神の言葉よりも人間の想いらしい。 人間味と言えば、私は主役のイエスよりもローマ帝国の総督が気になった。彼の、あまりにも人間臭い苦悩と決断には、共感こそしないが興味を引かれる。 それから、ときどき姿を現す悪魔の妖しい美しさに惹かれた。悪魔というものが存在するなら、きっと醜くはなくて、むしろあのように美しいんだろう。『MONSTER』のヨハンみたいに。美しいからこそ、人は悪魔と知りながら魅せられるのだと思う。
どうやら私は、この映画を観るよりも、マザーテレサの言葉に触れたりジョン・レノンの『Happy Christmas』を聴いたりミケランジェロの『最後の審判』を観たりするほうが、敬虔な気持ちになれるらしい。
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