月に舞う桜
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東野圭吾の『手紙』の残りを読み終えた。 小説を読んでこんなに泣いたのは、久しぶりかもしれない。うるっと来ることはよくあるけれど。 泣いたせいで、読み終わってから頭が痛くなった。 泣いたあと、頭が痛くなるときとならないときがある。それは流した涙の量の違いというより、泣いた理由や内容の違いによるものなんじゃないかと私は思っている。泣いたあと頭痛がしないのは、切なくてかなしいけれど現実を突きつけられて考えさせられるというのではない、単純に「いい話」の小説を読んだとき、もしくは映画を観たとき。そういうときの涙は、カタルシスになる。だからたぶん、頭痛に繋がらないのだ。 でも、『手紙』は全然違う。『グリーンマイル』を観たあとみたいな感じ。テーマがものすごく重くて、そこから目を逸らすことすらできないほど重いので、どっと疲れてしまう。それで、頭が痛くなる。 「いい話」ではないけれど、いい小説だった。解説で紹介されていたジョン・レノンを巡る(と言うより、オノ・ヨーコを巡る?)エピソードも含めて。
こういう小説を読むと、反動で甘ったるいものがほしくなる。例えば『下妻物語』みたいな、「人生は甘いもの。疲れることはしたくない」と言ってしまうような小説。 そりゃ、そうだ。疲れることはしたくないし、考えたくない。誰かや何かにずっと甘えてワガママ言っていられるなら、そんなに楽で楽しいことはない。人生は、そんな感じで何とかなっていくものなんだ。 ……って思えちゃうような小説や映画がほしくなる。
犯罪加害者の家族に対する差別が、本当に『手紙』の中で社長が言っているようなことだとすれば、そういう差別と女性や障害者や外国人への差別は次元や性質の違うものなんだろうか。 どうなんだろうね、ジョン・レノン。
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