月に舞う桜
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※25日、26日分も更新しました。
夜、ひたすら『チョコレート革命』を読む。 旅先で詠んだ短歌にも素敵なものがたくさんあったけれど、やはり短歌は恋愛を綴るのに最適な表現方法だな、と思う。 特に、不倫の歌。 情熱的で繊細で、苦しい。 太陽の下で何も包み隠さず手を繋いでいられるような恋は、わざわざ短歌にする必要がないのかもしれない。 400首以上の短歌はそれぞれに心に染みて、豊かな時間を作り出してくれた。 けれども、それ以上に素晴らしかったのは、ドリアン助川さん(現TETSUYAさん)の解説だ。 万智さんにはかなり失礼な言い方だけれど、あの400首以上の短歌は解説の前振りなんではなかろうかと思うくらいだった(それにしても、何て贅沢な前振り!)。 おそらく、私の心にずっと記憶される文章の中の一つになることと思う。 創造するということ、その苦しみと限界、そこを超えた真実。 彼の言う通り、すべてはすでに与えられているのだろう。 私たちは、発信者になりたくて言葉を尽くしたり命を削ったりしているけれども、そんなものは、取るに足らない。だとしたら、もう、受信者になるしかないのだろう。すでに与えられているものを、ただ受信する。 世界が美しく残酷であること、愛する人に幸福を与えられていること、取り返しのつかない事態が起こっているということ、それでも世界は在るということ。私たちはただ、それらを受け取って、受け取ったものを言葉にしているに過ぎない。 あらゆるものを受取ったとき、きっと、今までとは違う発信の仕方に到達できるのかもしれない。 限界を見て、限界の先の真実にきちんと気づくことができるのは、とても素敵で神々しい。そして、それを自分の言葉で誰かに伝えようと思えること、伝えられることは、もっと素敵なことだ。
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