月に舞う桜
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朝ご飯を食べながら、昨日録画しておいた映画『LOVERS』を見た。 チャン・イーモウ監督の映画は、『初恋の来た道』『HERO』『LOVERS』と王道の3本しか観ていないのだけれど、この中では内容的には『初恋の来た道』が好きだ。 「切なさ」の描き方という点で、私には一番しっくりきたから。 『LOVERS』は『HERO』に続き、とにかく映像が美しかった。 日常の何気ない風景の素朴な美しさとは違うけれど、「現実の自然を撮っているのに、どこか現実感のないファンタジックな美しさ」というのもいいものだなと思わされる作品だった。 個人的には、ものすごく印象に残るストーリーというわけではなかったけれど、竹林の緑や吹雪の白や衣装の鮮やかさを目にするだけでも、充分観る価値のある映画だと思う。 あと、BGMの使い方に「中国っぽさ」の押し付けが感じられなかったところが好印象。
私は創り手としても受け手としても小説という媒体が性に合っていると言うか好きなのだけれど、絵(写真や映像も含めて)や音楽には勝てないなぁと思うことがある。 便宜上、脳と心を分けるならば、小説は一度脳を通さないと心まで届かない。まず理性を使って内容やストーリーを把握しないと、感性が充分には刺激されない。 でも、絵や音楽は理性を通さずとも、直接感性に訴えかけてくる。 小説だって最初の一行を読んだだけで心が震えるようなものもあるけれど、出会った瞬間の衝撃で言ったら、絵や音楽はたぶん比べ物にならない。 絵や音楽と小説の間に芸術的な優劣はない。 けれども、見た瞬間、聴いた瞬間に「理解」という過程を飛び越えて涙がぶわーっと込み上げてくる、そういう威力を目の当たりにすると、私は創り手として「ああ、やっぱ勝てないなあ」と思うのだ。
とか何とか御託を並べてみたけれど、『LOVERS』の第一の感想は、「かっこいい男性二人が自分を巡って争うって、なんて素敵で羨ましい事態なんでしょう!」だった…。 結局そんな感想かよっ!
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