永遠の半神...楢原笙子

 

 

月鏡〜はじまりのこと7〜 - 2008年07月05日(土)






彼とわたしは
ひとつのテーブルをはさんで座った。
そんな風に
ただ向き合っていられるのは
初めてのことだったけれど
気持ちはずっと近づいたような気がした。


足はどお?

もう大分楽です

よかった

待っている間はどうなるのかと

置き去りにされて?

彼は笑った。
わたしも笑った。

・・・
お優しいんですね

そうかな
普通だよ

・・・きっと
奥様はお幸せですね


そう言ってしまったあと
はっとした。
わたしの心が
その言葉に透けていそうで
自分が嫌な女に思えた。


さあ
どうかな

え?

いや
幸せの尺度はひとそれぞれだから


それはいったい
どういう意味なのだろう。
訊きたかったけれど
いけないところに踏み込んでしまうようで
口には出せなかった。


キミはどお?

えっ?
・・・今は
すごく幸せです


そう。
ずうっと見ていたあなたと
こうしていられる今が。
あなたがわたしのために
靴を買ってきてくれたそのことが。


・・・さんは?

僕も今幸せだ


その時一瞬
彼の心が
奥さんから離れて
わたしのところに
やってきたような気がした。











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