永遠の半神...楢原笙子

 

 

月鏡〜はじまりのこと3〜 - 2008年06月27日(金)






偶然の出来事とは言え
彼に触れられたことで
わたしはもっと
彼に近づきたいと思うようになった。


ある日のこと。
上司から出先の彼に書類を届けるよう頼まれた。

悪いんだけど営業事務は手一杯で。
明日使う資料なんだが
ホテルのフロントに預けて欲しい。
今からだと終業時間過ぎるから直帰でいいよ。

電車でゆうに二時間は掛かるその場所へ
わたしは彼の事を考えながら向かった。

住所と名前だけをもらったホテルは
駅からそう遠くない
と聞いていたのに
何度か人に聞いても判らず
ぐるぐると歩き廻ったあげく
とうに通り過ぎた場所にあった。

フロントに書類を預けて
わたしの役目はあっけなく終わった。
けれども
なんだか立ち去りがたい気分で
思い切って尋ねてみた。

あのう・・・
今お部屋にいらっしゃるんでしょうか

遅くなるので預かっていて欲しいとのことでした

いったいわたしは何を考えていたんだろう。
部屋にいる時間の余裕があれば
彼は自分で会社に戻ったはず。

いや
それ以上に
彼がもし部屋に居たとしたら
それでどうするつもりだったんだろう。
自分で部屋まで書類を持っていく?
なんだかそれは唐突すぎる。

気がつけば
ヒールで歩き廻った足はじんじんと痛み
わたしはのろのろと
駅への道を戻ったのだった。












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