永遠の半神...楢原笙子

 

 

羊水#8 - 2007年07月02日(月)





彼のくちびるは薄くて柔らかかった。

長い舌が
わたしの差し出した舌に絡まった。
それは、ぬるぬると濡れて温かく、自在に動いた。

普段話したりなにかを味わったり、
それだけに使われている当たり前の器官なのに、
今は違う。
くらいお互いの口の中を探り、むさぼり、
感覚だけでそこの全てを知ろうとしている。


剥き出しの肉に彼の舌があたる。


わたしは、秘密の部分を差し出してしまった事実で感じ、
彼の舌でもういちど感じる。
そうして、感じたことは、
他の隠された粘膜にも伝わっていく。
からだ全部の熱が少し上がる。


(ああ・・・)


彼のくちびるが首筋を辿る。
小さな漣が内側に起こる。
既に感じた粘膜に、そのさざなみが重なって共鳴する。


彼の背中に手を回す。
この人がくれる感覚を受け入れるシルシに。
そうして、
余分な肉のない背中に気づいて、好ましいと思う。


雑木林の間をぬって、
落ちかけた太陽の光が
その背中を柔らかく照らしていた。









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