とっておき

2003年10月08日(水)

なんか長くなった。


  *


「わしは思うんだがね」
「どうしたんですか、教授」
「おまえ、爪は隠してるか」
「…は?」
「なんだそのとうとうボケたかみたいな目は」
「違うんですか」
「違うわい。能ある鷹は爪を隠す。爪は隠してるか」
「才能を無駄にひけらかしてないか、ってことですか」
「察しがいいな」
文章ネタやり始めると長いですから
「大人の事情だな」
「で、才能ですか?いや別にどうでしょう?」
「まあ、元々おまえに才能があったかどうか疑問だからな」
「ひでえ」
「とにかく、いつも爪を見せてばかりだと、今に痛い目にあうんじゃないかと思ってな」
「ふーん?」


  *


単に教室移動と言っても、うちの大学くらいになると、
横断歩道をいくつも渡ったり、端から端までだと10分くらいかかったりします。
キャンパスが広いことを自慢してるんじゃないです。
イナカなだけです。(おまけに各校舎バラバラに存在してるし)

で、本日教室移動中、道端に猫を発見。
か細い声で鳴くやつでね。おまけにずいぶん痩せっぽち。

「おお、どしたどした」(猫好き)

日ごろからあらゆる種類の野良猫に避けられてる私ですが、
座り込むとそいつは近寄ってきて、擦り寄ってきました。おお。

「おまえ飼い猫かー?でも鈴とかねえなあ」

細い声でにーにー鳴いてます。
あまりに擦り寄る姿を見て、ふと気付きました。
これはアレか、エサねだられてんのか。

「いや、ダメだぞ!俺だって今給料日前で摂生生活送ってんだから!本来もっと色々食べたいところを、断腸の思いでしょう油ラーメンに変更してだな」

にーー。

ちょっと待ってろ

急ぎコンビニに走って、ソフトさきいか購入。(298円)
あー、こういうときに限って100円パックねーんだもんなあ、
まあコンビニあるだけマシか(しつこいですがイナカです)と思いながら戻ってみると、
猫が見当たらない。

「まあ、そういうもんだよなあ」

近くの墓地とかまで少し覗いて探してみたんですが、結局いない。
がっくりと肩を落としながら、ビニール袋に入ったこのさきいかどうしよう、ととぼとぼと教室に向かおうとすると、
背中から、か細い声がひとつ。

にーー。

どこからか出てきました。
目やにの溜まった汚い顔で、毛並みもキレイと到底言えない、
痩せっぽちの、さっきの猫。

「ほらほら、買ってきてやったよ」(ものすごい嬉しそう)

食べやすいようにやわらかくほぐしたさきいかを、
あげるそばからがっつがつ食べていきます。
ああかわいーなあよしよし指食うな。
エサあげるなんて、飼う責任もとれないのに!という意見もあるでしょうが、まあ近くの墓地のお供えもの食べちゃうよりはなあ、とか思って。
しばらく座り込んで、ばくばく食べるのをじっと眺めてました。

「はいはい、おしまいな。俺も授業いかねーと」

さきいかをしまうと、しばらくはカバンによじのぼってこようともしてたんですが、
そのうち、まあおなかいっぱいだしいいかーと思ったか、
プーイとどっか行っちゃいました。
ああ、行っちゃったよ。

猫ってそういうもんですかね。去りゆく姿が少し淋しかったのですよ。


  *


「ところで、かく言うPATの爪は、長いこと隠しっぱなしですが」
「む。そうだな」
「さぞかし立派な爪なんですよね?」
深爪してるだけかもしれんが
「なるほど」
「爪を出すタイミングというのは、ちゃんと考えなければならんだろ」
「タイミングかー。やっぱり、ずっと出しっぱなしじゃいけないんですね」
「いけないとまでは言わんが。ずっと出してるぶん、周囲がそれに慣れてしまうかもしれんな」
「そうですかね?」
「少なくとも、大事なタイミングがどこなのか、周囲にはわからんだろうな」
「なるほどねえ」
「あと、爪出しっぱなしだから、知らず引っかくこともあるだろうな」
「…なんか、教授、人生訓ですか?」
「いや、先日掲示板がきっかけで出会った女がなあ」
「うわー。あんたいい歳して出会い系とかやめなさいよ!」
「三丁目の角の掲示板なんだが」
出会い系町内掲示板!?


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