東京駅の二人
2001年10月25日(木)
東京駅。
出会いと別れを繰り返す場所。
今日もそこには、ひとつの別れがあった。
「じゃああたし、そろそろ行かないと」
「そうだね」
口ではそう言うものの、動こうとはしない二人。
「…4年だっけ」
「…うん」
「考えてみると、やっぱ結構長いよなぁ」
男は軽い口調でそう言ったのだが。
「…うん…」
ふと顔を覗き込むと、女は必死で涙をこらえていた。
「あー!いやまぁほら、なんとかなるって!ほらほら!」
肩をぽんぽんと叩きながら、慌てて明るく言う。
「な?こんなときに泣くなって」
「うん…ごめん。ありがと。もう大丈夫だよ」
女は笑顔をつくってみせた。この笑顔が見れなくなるのは心残りだが。
「しかし、4年ねぇ。帰ってくる頃には、お互い…いくつだ?」
「えと。29歳」
「29かぁ。えぇ!?もうすぐ三十路すか!?うわー」
「もう立派な大人だね♪」
「いや、なぜ人ごと」
「えー?だってあたしはいつまでもてぃーんえいじゃーだもん」
「25の言う台詞じゃねっつの」
二人の笑い声をかき消すように、その時放送が入った。
「あ。発車するみたい。そろそろ行くね?」
「あ、うん。はい荷物」
「ありがと」
笑顔の余韻はあるものの、お互い寂しさは隠し切れない。
「…帰ってくるときは、絶対連絡するからね」
「おうよ。待ってる」
「…約束」
そっと小指を差し出した。苦笑しながらそれに合わせる。
「じゃ、行くね」
「ま、がんばってこーい」
「次に会うときには、一皮も二皮もむけてるから!」
「おうよ。いくらでも脱皮してきなさい」
重い荷物を引きずるようにしながら電車に乗り込む。
発車を告げるベルが鳴り響く。
そこで、軽口ばかりの男の表情が一瞬だけ。
「…帰ってきたら!」
「え?」
「帰ってきたら… 結婚しよう」
女の表情は、閉まるドアに隠れて見えなかった。
そのまま電車は駅を出て行った。男はそれをずっと見送っていた。
とか、そんなスケールのでかい夢を見ました。
なんつーか、何がなにやら。微妙に動転してます。
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