明日から会社だ。あの女に会わないといけないかと思うと憂鬱だ。仕事も嫌なら職場も嫌だ。将来にも希望が持てない。過去の嫌なことを思い出す。人と仲良くなれなくて迫害を受けた。これ以上ない不幸にあった。ひどい鬱で何をやっても楽しくない。女が嫌いだ。特に婆が嫌いだ。最近は男も嫌だ。なりたいロールモデルではないし、男のやることに興味はない。政治経済、科学、男のやることに興味を失った。仕事にはもとより興味はない。日々やる気は失われていく。あと8年もある。どうやって過ごすのか。下手をすると13年も働かないといけないかもしれない。そうしないと生きていけないからだ。職場では差別、疎外されている。一切の人間関係から排除されている。こちらから願い下げだ。誰とも付き合わない。心を開く気になれない。差別する相手と心が通うわけがない。どうしてこんな人生になったのか。後悔ばかりだ。男にも女にもなれなくて居場所を失った。友達も一人もいないし、家族もいない。誰もかれも敵だ。どうやって生きていったらいいのかわからない。脳がダメージを受けて知能が低下した。唯一の自慢だった知力も衰えて、何を支えに生きていけばいいのかわからない。何もできなくなってしまった。何をどうすればいいのかわからない。女にも劣る。自分を守らないといけない。最近は女の書いたものを読んでいる。それも軽くて柔らかいものがいい。エッセイが読みやすい。私は女なのに女と仲良くできず、女社会、女文化から疎外されてきた。これからは女の世界に浸って生きていこう。活字の世界なら邪魔する者はいない。失敗に終わった半生から逃避して、女の見た夢をたどる人生を始めよう。敗北と呼ぶなら呼べばいい。私は生きたい。生き延びねばならない。そのためには自分を受け入れ、認めることから出発しないといけない。私は自分が何者かを正しく認めることができなかった。私は一人の女だ。男にはなれなかった女だ。そのことを認めずに生きる道はない。
最近は、男にも圧倒的な違和感を覚える。仲間だと思ったことは一度もない。男の興味を持つものに興味を持ったことは一度もない。男はいつも見慣れぬ異性だった。でも好きになることは厳しく自分に禁じていた。今は何者だか全くわからない。どういうスタンスをとっていいのかわからない。仲良くなんてできないと分かった。男と友情関係を持つことは不可能だと分かった。仕事仲間でも嫌だ。なりたい存在でもなれそうな存在でもない。さりとて女のようにパートナーになれるわけでもない。全く不毛で無意味な非生産的な関係だ。関係を断ち切りたい。女とは、空想上の世界で友達になれそうな気がする。女のくだらないおしゃべりをいつまででも聞いていられる気がする。共感できる気がする。生身の女では無理だ。女に性欲を覚えることはまれだ。全くないわけではないが、持続しない。関係を維持できるほど強くない。自分が演技しているような気がする。本心じゃないような気がする。女を本気で好きになることはできない気がする。ポルノの延長で、売春婦を抱いている。その方が気楽だ。女同士の関係を結ぶことができる。私はこの世では花も実もつけない植物だ。でも空想の世界で生き延びたい。高山のような薄い大気を吸って生き延びたい。高山植物のようにひっそりと花を咲かせたい。
私はこの世では居場所がない。どうしても見つけられない。男でもなく女でもない。芸術家でも会社員でもない。群れから離れた私を危険な女どもが襲い掛かる。危害を加えられたことは一度や二度ではない。絶対に自分を守らないといけない。絶対に自分を簡単に守る権利がある。戦わないといけないはずがない。自分の身の安全を守るのに必死で戦わないといけないはずがない。私は戦うのをやめる。私は私の権利を完全無欠なものとみなす。私に危害を加えるものを絶対に許さない。
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