* たいよう暦*
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小学生の頃、時々、駅まで父親と二人乗りして出かけました。 改札まで送って、ばいばい、と手をふった後は、二人乗りしてきた自転車を今度は一人で乗って帰るという寸法です。 その逆もありました。電話を受けてから、自転車に一人で乗って駅までお迎えに行き、帰りは二人乗りして帰ってくるのです。
毎日というわけではなかったので、きっと、父親が寝坊したときや疲れたときなんかにやっていたのでしょう。 私と弟は、その「時々」が嬉しくて、順番を奪い合いながらやっていました。
あるとき、弟が朝送っていったまま、いつまでたっても帰ってきませんでした。 自転車で片道5分強、子供がゆっくり乗って帰ってきたとして10分、往復で15分の道のり。ところが、そのときは15分すぎても、待てどくらせど帰ってこなかったのです。
実は、そのとき、弟は車とぶつかっていたそうです。 車がほとんどスピードを出していなかったのと、弟の体が軽かったおかげで、車のフロントをごろんごろんと転がって、地面に落ちただけですみました。 擦り傷もほとんどなく、本人もけろりとしていました。
でも、その日以来、私たちの送り迎えはなくなってしまいました。 私は、父親を独占しての二人乗りも楽しかったし、改札で「いってらっしゃ〜い」と手を振り、父親が「いってくるよ〜」といった後、階段を降りる寸前に、こちらを見ずに手だけふって消える姿も好きだったし、電車がきたあと、たくさんの人が改札を出てくる中で、父親をみつけだすのも好きだったので、それはすごく残念でした。 でも、きっぱりその日以来一度もその楽しい送り迎えはなくなってしまいました。
「いってらっしゃい」と「いってきます」 「おかえりなさい」と「ただいま」
送ったり迎えにいったりした先で言うのは、家の玄関で言うのとまた違って好きだなあと思うのは、そんな小さな頃の思い出があるからかもしれません。
今日は、駅まで人を迎えに行きました。 二人乗りのできない自転車で。 「わざわざ迎えにこなくてもよかったのに〜。家でまっとったらよかったのに〜」
うふふ。その「わざわざ」が楽しいんだよ。
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