竜也語り

2005年06月08日(水) 舞台「近代能楽集・弱法師」埼玉公演6月5日

◎さいたま芸術劇場 C列10番台


ネタバレありです。
4年ぶりの再々演にあたって竜也くんも、ある意味蜷川さんも危惧していたこと…“竜也くんはもう少年ではない…”この日4年ぶりに俊徳を観たが、思ったより前述の不自然さは感じなかった。俊徳を演じている時の竜也くんは20歳になる少年に見えていたと思う。特に級子に媚びたような声で甘えるようなしぐさやその表情などは。しかしカーテンコールに立った時はちゃんと青年に見えてしまうところが不思議を言うか、さすがと言うか…。

さて、この「弱法師」は私が竜也ファンになって初めて観劇した演目である。であるからこちらにも思い入れというものがあるのだ。4年前と比較することがいいことであるのか、邪道であるのか分らないが、でも私の場合、前回との比較も感想の一部であるので…。
まず冒頭の演出が違っていた。前回は級子が一人家庭裁判所の机に座っているところで幕が開き、2組の両親が通路から登場するという演出だった。この時の4人を迎え入れながらゆっくりとおじぎをする級子(高橋恵子さん)の物腰がしっとりしていて、しかし調停員としての毅然さも備わっており、私が印象に残っているシーンの1つだったが、今回は幕が開いた時点でもう5人が揃って部屋に座っていた。
そして竜也くん。4年前に比べ随分と縦横無尽に声色を使い分けていた。高低強弱と…。これは前回の方が好きであった部分もあるし、今回の方がよいと思った部分と様々であった。「お母さん…虫けら。」この台詞は前回の方が好きだ。より強い拒絶を表したかったためか、今回は少し声が低すぎるような。確か前回は甘ったるい声色でこの台詞を発し、それが人を小馬鹿にしている態度を上手く表現し、俊徳の優越がよく伝わってきた。そしてちょっとがっかりしたこと。それは俊徳が登場し、級子に自分の右側にいるのが産みの親であることを伝えられた時の俊徳の反応。今回は表情を動かさず微動だにせず、ただ真っ直ぐ前を見据えていたが(これもやはり俊徳の強い拒絶の強調か)、前回はほんの気持ちだけ産みの親の方へ顔を向けたのだ。そして冷たく一瞥をくれた(とは言っても目は見えていないのだが)。この時点で俊徳はまだ黒いサングラスをかけた状態であるが、その冷酷な目が何故か手に取るようにこちらに伝わってきた。前回のこの俊徳の表情が私はとても印象に残っており、大好きなシーンであったのだ。
竜也くんは今回の公演前、10代の頃のようなあの激しさを失ってしまっているのではないか…と不安そうだった。これがこういうことなのだろうか。確かに目を見開く狂気的な表情は少なくなったように思える。しかしそれに代わって多彩な表情が新たに生まれてきているわけで。かえって表現の幅が出てきたということだと思う。そして最後に私が最も竜也くんの成長を感じたこと。それは外見的なことなのであるが…白いスーツがキマリすぎ!似合いすぎ!カッコ良すぎ!(笑)。前回ももちろん素敵であったが、ほんの少しスーツがダボダボしていた感じだった。そしてそのことが、このスーツが俊徳の意思に関係なく育ての親に着せられてきたものであることをこちらに想像させ、いくら主導権を握って周りを困らせてはいても、俊徳の不憫さを引き立てた。

…ともう感じたことは山ほどあるのだが、何せ私も1回目の観劇であり、気が付いていないことが沢山あるはずなのだ。それは追々書いていこうと思う。ちなみに今回の級子役の夏木マリさん。想像していたより普通だった。もっとえぐい級子を期待していたのだが(笑)。でもポイントの台詞「いいえ、見ないわ。」本当はちょっとだけ級子は“この世の終わり”を見たのではないか…?それでも敢えて拒絶した。そんな感じが伝わってくるような、決意の強い眼差しをこの台詞前の間に見せたように思えた。


***今日の俊徳チェ〜ック***
・煙草はふかしているだけねん。喉を大事にしているのでしょう。
・泡ふく熱演。でもこんなところ大好き♪
・カーテンコールはいたって静かなもの。少し笑顔を見せてくれた。


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